2020年学生駅伝の開幕レースとなった全日本大学駅伝。コース沿いにある皇学館大のエース・川瀬翔矢(4年)が関東勢を抑え、2区で17人抜きの快走で区間賞に輝いた。東海地区の大学が区間賞を獲得したのは実に39年ぶりのことだ。

川瀬は高校時代、目立った活躍のある選手ではなかった。近大高専3年時、三重県高校総体は1500mで4位の成績を収めたが、5000mは最下位でレースを終えている。しかし、皇學館大進学後に急成長。2年時の犬山ハーフマラソンで初ハーフマラソンながら1時間3分54秒(2位)の東海学生記録を樹立する。

3年時の11月には5000mで13分36秒93を出し、自身の東海学生記録を更新。1万mでは28分26秒37をマークし、東海学生記録を39年ぶりに塗り替えた。そして2月には丸亀国際ハーフマラソンを1時間1分18秒でフィニッシュし、現役日本人学生のトップに立つ成長を見せている。

その川瀬が迎えた大学最後の学生駅伝。昨年の全日本大学駅伝2区でレースを共にし、区間記録を打ち立てた伊藤達彦(現・Honda)のイメージが頭にあったという。

21位でタスキを受け取ると区間記録の樹立を目指して突っ走る。2㎞で4人を抜くと、6㎞過ぎには青学大と東洋大に並び、8位集団を形成。その後、3位早大まで1秒差の4位まで追い上げ、17人を抜いてタスキ渡しをした。

タイムは伊藤の区間記録と7秒差の31分24秒。「最初に速く入り過ぎてしまって、後半きつくなってしまった。満足できる走りですが、区間記録に少し届かず、先頭にも立てなくて少し物足りないなと思っています」とレースを振り返った。

大学4年間で大きく成長した理由を問われると「監督や仲間のお陰だと思う」とまず、仲間への想いを口にした川瀬。「コツコツやってきて、一杯チャレンジして、多くのレースに出て結果かなと思います」と、特別にすごい練習をしてきたわけではないと明かした。

川瀬の学生駅伝は終わったが、1万mで27分台、5000mは13分20秒台を達成して大学を卒業したいと次の目標は明確だ。

「高校から陸上を始めて7年間、三重県に強くしてもらったので最後の全日本は恩返しする気持ちで走りました。今回の区間賞をきっかけに東海地区のレベルが上がってくれればいいなと思います」

感謝の気持ちを持ち、周りのことを考えられるからこそ川瀬は大きく成長したのだろう。

(「学生陸上スポットライト」野田しほり)