東京五輪男子マラソン代表に内定している大迫傑(ナイキ)が主催した『Sugar Elite』。大学の枠を超えて、世界で戦う強さを求めるチームとして選考に通過した高校生、大学生が8月17日から24日まで合宿を行った。参加者の一人は中谷雄飛(早大3)だ。

2018年4月、中谷は5000mで世代トップの13分47秒22という記録を持って佐久長聖高から早大へ進学した。6月に岐阜で行われたアジアジュニア選手権1万mでは銀メダルを獲得している。そして11月には5000mを13分45秒49で走破して、自己ベストを更新した。

駅伝シーズンでは三大駅伝全てにエントリーされると、区間上位に食い込む走りを見せる。大学駅伝デビュー戦となった出雲は3区で区間4位、順位を16位から11位に押し上げた。続く全日本では3区で区間2位の好走。箱根駅伝では1区を担い、4番目に鶴見中継所へ飛び込んだ。

ルーキーイヤーは順調な滑り出しを見せたが、2年目のトラックシーズンは低迷した。関東インカレは5000mで20位、日本インカレは5000mで19位に沈んでいる。両レースともに暑い日だったが、特に日本インカレでは走りが重く感じた。

中谷は箱根駅伝予選会の出場を回避。チームは9位で通過した。本戦は1年時と同じ1区。最終エントリーが出た頃、大手町でアップをしていた中谷はリラックスした表情をしていた。そして、高速レースのなかでも積極的な走りを披露。区間順位こそ前年より2つ落としたが、タイムは1分以上縮めている。調子が上向いてきた。

続く都道府県対抗駅伝は長野のアンカーで出場した。トップでタスキを受け取ると後ろから迫ってくる埼玉・設楽悠太(HONDA)を振り切り、何度もガッツポーズをしながらゴールに飛び込んだ。大会新記録で長野に3年ぶり8回目の優勝をもたらした。区間順位も福島・相澤晃(東洋大、現・旭化成)にこそ敵わなかったが、実業団選手を抑えて2位になっている。

2月、早大記録会の1万mで28分27秒71をマーク。それまでのベストタイムから20秒以上縮め、世代トップとなった。今春は大会が中止・延期となり、調子が上がってきた状態でレースに挑めていない。しかし、秋以降この合宿を通してさらに成長した走りが見られるはずだ。

世代ナンバーワン選手となったことも、駅伝での活躍も、中谷にとって通過点でしかない。国際大会に出場するだけではなく、中谷が〝世界と戦う日〟を待ち遠しく思う。

(「学生陸上スポットライト」野田しほり)