「黄金世代」。このワードを昨年度の駅伝シーズンで何度聞いただろうか。東海大を支えてきた1997年度生まれの選手たちは、幾度となく駅伝ファンを沸かせてきた。しかし、昨年度の三大駅伝すべてで主要区間を託されたのが1学年下の塩澤稀夕(現4年)だ。

出雲駅伝は3区を任され、6番目に中継所を後にする。4秒先にスタートした東洋大・相澤晃が区間記録を25秒更新する走りをする中、その相澤に追いつき、食らいつく姿を見せている。区間賞は叶わなかったが、区間記録を2秒上回った。

続く全日本大学駅伝は3区に出場。先輩・館澤亨次が前年に樹立した記録よりも12秒早いタイムで走破した。またしても相澤には及ばなかったが、区間2位の城西大・菅原伊織と1秒差の好走。チーム順位も6位から3位へと押し上げ、16年ぶりの優勝に貢献した。

全日本大学駅伝の勝利から2週間後、日体大長距離競技会1万mで28分16秒17をマークする。1年の秋に出した自己ベスト28分36秒15を大きく更新して、黄金世代を抑えて1万mは学内最速となった。

迎えた初めての箱根駅伝は各校のエースが集う2区にエントリーされる。塩澤がタスキを受け取ったのはトップの創価大から10秒遅れの4番目。1kmを通過した辺りから先頭集団に加わり、創価大・ムイルらとレースを進めた。

塩澤は22km過ぎまで先頭集団の前方に陣取り、3位で戸塚中継所に飛びこんだ。花の2区で20km以上にわたりトップを走ったことになる。塩澤の目にはどんな景色が映っていたのだろうか。

都道府県対抗駅伝を経て2月には米国・ボストン大の室内5000mで13分33秒44をマークする。それまでの5000mの記録は1年の時の13分57秒03。11月に更新した1万mの自己記録と併せて、今季の東海大でトップに立った。

塩澤が入学後の東海大は三大駅伝すべてで優勝し、チームの一員として喜びを味わっている。しかし、塩澤が走りで貢献でしたのは昨年の全日本大学駅伝だけだ。最終学年となった今季は黄金世代が叶えられなかった「駅伝三冠」を目指す。

エースとして、キャプテンとして、塩澤はどんな〝進化〟を見せるのか。

(「学生陸上スポットライト」野田しほり)