味気ないプリント印字のチケットが主流の昨今、デザインに凝っているのが埼玉西武ライオンズだ。2016年から球場発券チケットに主力選手を全面に押し出した8種類を使っており、先日、今年のデザインが発表された。

埼玉西武ライオンズホームページ「2019年 選手チケットデザイン(8種類)決定!」 

多和田、森、外崎、源田、山川、中村、栗山、秋山の各選手がデザインされたチケットで、窓口ごとに異なるデザインの2選手が交互に発券されるという。フルコンプリートを目指すファンも出てくるのではないか? なにはともあれ味気ないプリント印字のチケットが主流となり、スマホを使ったチケットレスも進む中、チケットデザインに力を入れる西武は「半券マニア」にとって実にありがたい。

西武の球場発券チケットは本稿第2回『地平を駆けるレオを見た! ご機嫌な東尾「うまい酒飲んでます」』で取り上げたような、レオをあしらった常備券が長らく使用されてきた。手元の半券を調べたところ公式戦は2005年までこの常備券が確認できた。

05年までの球場発券チケットはレオがデザインされた汎用の常備券が使用されていた

しかし、2006、2007年はプリント印字のチケットに。台紙にレオがデザインされてはいるとはいえ、実用性重視の残念なデザインだった。

07年はちょっぴり残念なプリント印字

この2年は親会社のコクドの業績不振や、西武鉄道の上場廃止の煽りで球団売却がささやかれていた時期で、チームも07年には5位と26年ぶりのBクラスの沈み、観客動員は西武に経営権が譲渡されて以降最少の1,093,417人に落ち込むまさにどん底状態だった。

しかし2008年に渡辺久信監督が就任しチームの名称を「埼玉西武ライオンズ」と改め、松坂大輔のメジャーポスティング移籍で得た「松坂マネー」を使い(?)球場改修を行い、そして球場発券チケットを縦型のデザインに変更するとチーム状態も上向きに。4年ぶりのリーグ優勝、日本一まで駆け上がり、観客動員も1,413,583人にV字回復。以後、着々と観客動員は増え、10年ぶりに優勝した昨シーズンは1,763,174人になった。

デザインが縦型に変更された08年、日本一に
菊池雄星モデルは昨季の8種類あったデザインのひとつ

チーム状態がどん底だった2シーズン、プリント印字のチケットが使われていたのは偶然だろうが、球団経営のゴタゴタでチケットのデザインに凝るほどの余裕がなかったのは事実ではないか。半券は「観戦記念品」にもなり、凝ったデザインのチケットを作るのはファンサービスでもある。チケットのデザインから球団の経営状態やファンサービスの姿勢が垣間見える、というのは言い過ぎだろうか?

(「プロ野球半券ノスタルジア」石川哲也  )