これまでの数回の記事で述べてきた、技術が上達する練習方法をまとめますと、多様性のある練習、ランダム練習、全習法、内在的フィードバックを重視する、ということを推奨しています。これらの練習を推奨することは、すべて同じ結論に行きつきます。

それは、目先のパフォーマンスの向上にとらわれないことです。

競技初心者であれば、あまりにも失敗が繰り返し起こると失敗の技術が身についてしまうので、注意は必要です。しかし変化にとんだ練習、練習順序はランダム化する、技術練習は分けず同時に行う、そして自分自身で得られる運動感覚を大事にするという、技術の習得には回り道をする選択を薦めています。

これらは練習段階では思うような技術の習得ができず、歯がゆい思いをするかもしれません。しかし実際はこの練習が上達に向かっており、試合などの本番に生きる技術を身につけているのだと信じることが必要です。

選手の中には、指導者からのアドバイスを受けずに個人で活動している人もいるでしょう。または、1人で自主練習を行うこともあると思います。コーチから指導を受けない場合、上記の練習方法を理解しておくと成長につながりやすくなります。1人で練習していると練習について指摘してくれる人が誰もいないので、練習で成果が得られないと、恒常的な練習やブロック練習、分習法、ビデオを頻繁に用いて外在的フィードバックを得ることで、成果を追い求めてしまいがちになります。

しかし自主的に練習ができる選手は内発的動機づけが高いはずですから、練習の成果を感じなかったとしてもやる気を失わず、先述した練習を理解して継続していってほしいと思います。

※『note』より加筆・修正。

(「パフォーマンスを上げるためのスポーツ心理学」松山林太郎 )