競技を行っていれば、いつかは必ず「引退」のときが訪れます。現役時には競技に集中したいため、引退については考えたくない人もいるかもしれません。しかし現在では、プロスポーツの組織でも引退後のキャリアをサポートするなど、現役時から引退後について意識させ、対処できるようにしている傾向にあります。現役時代同様、またはそれ以上に引退後花開いたスポーツ選手は少なくありません。学生選手にしてもプロの選手にしても、競技から離れた後の人生がありますので、惑わないためにも現役の時から引退を意識しておいたほうが良いでしょう。また指導者側からも、競技についてだけではなく、引退後も意識できるようなサポートを考える必要があります。

選手が引退後を考える上で、現役時から以下の4つの視点を認識しておくと良いです。まず1つ目は、引退後までの「長期的なスポーツキャリアの計画を立てる」ことです。以前に「目標設定」を行うことを薦めましたが、そこで立てた目標よりも先にある引退をも見すえておくことによって、競技へのスタンスや目標、モチベーションがさらに明確になるでしょう。スポーツへの取り組みが充実したものとなります。

2つ目は、選手がスポーツだけではない「幅広いアイデンティティを持つ」ことです。これは前回記したバーンアウトの箇所でも説明したものと同様で、行っている競技のみを自分自身のよりどころとせず、さまざまな事項の関心と経験を積んで視野を広げておくことが良いでしょう。スポーツ以外の選択肢も考慮しておくことが、引退後の生活を主体的に進め、適応させていくことができます。

バーンアウトを避けるには「固執」しないことが重要

3つ目は、「引退をターニングポイントとする」ことです。引退には、さまざまな感情の中に不安や喪失感などのネガティブな思いも出てくるでしょう。しかしここをターニングポイントであると考えることで、競技に引きずられることを防ぎ、新たな目標に挑戦するよう未来志向で考えることができます。

また「ソーシャル(周囲の)サポートを受ける」視点を持つことも重要になります。引退について考えて悩んだとき、信頼できる人がいれば、負い目を感じることなくサポートを受けるといいでしょう。

※『note』より加筆・修正。

(「パフォーマンスを上げるためのスポーツ心理学」松山林太郎 )