暦は12月に突入し令和元年も残すところあとわずかとなった。開催を来年に控えた東京五輪出場を争う戦いが各競技で熾烈になる中、ウインタースポーツもいよいよ本格的なシーズンに入っている。夏に今シーズンが始まったカーリング界も例外ではない。2022年北京五輪の代表選考対象となる日本選手権は来年の2月に開催される。既に出場権を決めているチームだけでなく、出場権を目指して12月下旬から1月にかけて行われる各地域の選手権を戦うチームにとっても今は大事な準備期間だ。

そして、軽井沢国際カーリング選手権大会の季節が今年もやってきた。今年は、国内外から男子15チーム、女子12チームが参戦。12月19日(木)~22日(日)の4日間、会場となる軽井沢アイスパークで熱戦が繰り広げられる。アジアで初めてワールドカーリングツアー(以下WCT)に認定され、国内外から強豪チームが参加する同大会は、年の締めくくりを飾るのにふさわしく、カーリング界の年末の風物詩とも言ってもいい。

平昌五輪からカーリングに興味を持ったが、まだテレビでしか観戦したことがない。また、最近になってカーリングに興味を持ちはじめた“にわか”ファンの方々。思い切って、軽井沢に生観戦に出かけてはいかがだろうか? 軽井沢国際カーリング選手権大会の生観戦をオススメする理由を3つほど挙げてみよう。

国内トップチームがズラリ! 日本選手権前にその戦いをチェックしておこう

日本選手権の前哨戦ともいえる軽井沢国際カーリング選手権大会は、国内のトップチームが一同に会する豪華な顔ぶれだ。男子は、昨シーズンの日本選手権覇者で世界選手権でも4位に食い込んだコンサドーレ札幌、平昌五輪代表の両角兄弟が今年5月に結成したTM軽井沢が参戦。2チームに加え、海外遠征を精力的に行ってチーム力の強化を進めてきたSC軽井沢クラブも注目のチームだ。また、昨年の大会で平昌五輪金メダルのTeamシュスター(米国)を相手にスーパーショットの応酬で観客を沸かせた萩原諒が新たに結成した東京CROSSも面白そうな存在だ。

女子は、昨年は海外遠征のスケジュールなどもあり不参加だったロコ・ソラーレが2年ぶりに参戦し、中部電力、北海道銀行、富士急を加えた国内4強が揃い踏みとなった。ロコ・ソラーレは参加したWCTで全てクオリファイ(予選突破)を果たしている安定感、北海道銀行はグランドスラム(ランキング上位チームが招待されるWCT最上位に格付けされる大会)の1つであるマスターズ準優勝が光る。中部電力は11月のPACC(パシフィックアジアカーリング選手権)で準優勝し日本の世界選手権出場権を獲得。富士急は海外遠征のWCT参戦でクオリファイを重ね、シーズンスタート時からツアーランキングを大きく上げてきた。12月2日時点でのワールドツアーランキングは、ロコ・ソラーレ7位、北海道銀行10位、中部電力23位、富士急27位と4チーム全てがトップ30に名を連ねている。

今大会で各チームの戦いぶりを観戦しておけば、日本選手権を観る楽しみがもっと増すはずだ。

世界ナンバー1のチームも来日!  参戦する海外チームが凄い

注目は国内トップチームの戦いぶりに留まらない。参戦する海外チームもまた凄いメンバーが揃った。一番の注目は、男子のTeamエディン(スウェーデン)だ。昨年の世界選手権では、準決勝の日本戦、決勝のカナダ戦ともにチームショット成功率が90%を越す圧倒的な内容で2連覇を達成。現時点での世界最強チームと言っても過言ではないだろう。先月16日~23日に行われたヨーロッパ選手権は全勝で優勝。今大会でも期待を裏切らないパフォーマンスを魅せてくれそうだ。

男子は、Teamエディン以外にもビッグネームが集う。平昌五輪金メダルのTeamシュスター(アメリカ)が今年も参戦。カーリング大国カナダから参戦するTeamボッチャーも、12月2日時点のツアーランキングで3位につける世界トップチームだ。同じくカナダから参戦するTeamカルバートもツアー大会で上位進出をしており、日本勢には手ごわい相手となりそうだ。

女子の参戦チームは、男子ほどのビッグネームではないが、それでも日本勢と甲乙つけがたいツアーランキング上位の実力チームが揃っている。カナダからは昨シーズンの世界選手権代表でツアーランキング8位のTeamキャリーが参戦。アメリカからはツアーランキング13位につけるTeamロスと、昨シーズンの世界選手権代表でツアーランキング33位のTeamシンクレアが参戦する。ロシアから参戦するTeamシドロワはツアーランキングこそ32位だが、昨年の同大会優勝チームだ。

これだけのメンバーが国内で観られるのは、軽井沢国際カーリング選手権大会ならでは。国内トップチームをチェックしながら、世界トップのプレーを堪能できるまたとないチャンスだ。

入場料がタダ!? 破格のコストパフォーマンスでカーリングが観るなら今がチャンス

国内のトップチームを観るチャンスなのはわかった。世界トップのプレーを生で観てみたいとは思う。だけれども、それだけ価値のある大会を観戦するには、相応の対価が求められるのではないか? そう考えてしまう人も多いかもしれない。ましてや、カーリングに興味を持ち始めて日が浅い方にとっては、余計にハードルが高く感じられてしまうかもしれない。

しかし、それに対する答えこそ軽井沢国際カーリング選手権大会の生観戦をオススメする3つ目の理由だ。同大会は、予選リーグであれば何と入場料無料! プレーオフ(決勝トーナメント)でも、自由席2000円立見1000円という破格のチケット料金なのだ。比べるのが適切かどうかはわからないが、同じく12月19日~22日の4日間で開催される全日本フィギュアスケート選手権大会(会場:国立代々木競技場第一体育館)なら、一番安い席のチケット料金は8000円、一番高い席だと1万6000円。しかも、全て抽選販売(2次販売は12月2日に終了済)だから必ず取れるとは限らない。

もちろん、フィギュアスケートが日本で最も関心の高いウインタースポーツであり、多くのファンを抱える競技であることは承知しているし、それだけ需要の高いコンテンツであるからこその料金設定なのだろう。ということは、カーリングについても同様の事が起きる可能性はあると言える。将来、カーリング人気が大きいものになり、需要が著しく上がれば今のような料金では観戦できなくなるかもしれない(現に、今大会の自由席料金は昨年より500円アップだ)。今が、お得に生観戦を楽しむチャンスというわけだ。

さて、肝心のプレーオフのチケットだが、この記事を書いている12月4日の時点で、女子のプレーオフチケットは既に完売してしまっている。とはいえ、ガッカリするのはまだ早い。それでも、生観戦をオススメするのにはちゃんと理由がある。

1つは、男子の準々決勝と3位決定戦/決勝のチケットはまだ残っているということ。前述したように男子は海外からビッグネームが参戦しているので、ハイレベルな好ゲームに立ち会える可能性が高い。ちなみに、昨年の大会で個人的に一番面白かったのは男子の準々決勝だったことを付け加えておこう。そして、もう1つは入場無料の予選リーグが意外な掘り出し物だということ。男子の予選リーグは参加15チームが3つの予選リーグに振り分けられ、女子の予選リーグは参加12チームが2つの予選リーグに振り分けられている。前述した国内のトップチームや海外の強豪チームが同じリーグに同居しているので、予選リーグから好カードを観戦することができるのだ。予選リーグは大会初日の19日(木)から大会3日目の21日(土)のお昼まで。ただ、入場者数が多いと入場制限がかかる場合があるので注意。特に土曜日となる大会3日目は早い時間に来場することをおすすめする。チケット情報やスケジュールの詳細は、大会ホームページ(https://karuizawa-icurling.jp/)からご確認いただきたい。

軽井沢は意外に近い。新幹線なら東京から自由席で1時間と少しあれば着く。忘年会はあるけど、年末の予定はまだ決まっていない。そんな方がいたら、ぜひ令和元年の締めくくりに軽井沢へ足を運ぶことを検討してみてはいかがだろうか? ショットを投げる位置から見えるハウスがこんなにも遠く、そして小さく見えるのか。スイープする選手の動きがこれほどに激しいものだったのか。テレビでは気付かなかった氷上を進む石の音や懸命にスイープする時の音の大きさ。時折聞こえてくる選手の荒い息遣い。カーリングの生観戦は、皆さんの想像以上に鮮やかに視覚と聴覚に訴えかけてくれるはずだ。

(「ようこそ カーリングの世界へ」土手克幸 )