三重県にある皇學館大の名前が駅伝ファンに広まったのは2017年、全日本大学駅伝に出場した時だったのではないだろうか。翌2018年には出雲駅伝にも初出場。今年は出雲駅伝に2年連続で出場して、全日本大学駅伝は3年連続で出場している。

皇學館大の躍進を支えているのが、エースの川瀬翔矢(3年)だ。初ハーフとなった今年2月の犬山ハーフマラソンで1時間3分54分(2位)の東海学生記録を樹立。10月の出雲駅伝は2区で8人抜きを演じると、1週間後の中京大記録会5000mで13分49秒25をマークして、東海学生記録を塗り替えた。

全日本大学駅伝は2区で区間11位(区間新)に終わったが、2週間後の日体大長距離記録会5000m最終組は日本人トップの13分36秒93でフィニッシュ。自身が持つ東海学生記録を13秒近くも更新した。

そして迎えたのが11月23日の八王子ロングディスタンスだ。例年好記録が出る大会である。会場となった法大多摩キャンパスは細かい雨が降り続いた。気温は12度。気温以上に冷え込んでいるかのように感じられた。

川瀬は1万 m28分30秒を目標設定とした5組に出場。スタートすると縦長となった集団の後ろに位置を取った。3000mを過ぎた辺りで集団の中盤まで上げると、ペースメーカーが外れた後は先頭を走る作田直也(JR東日本)や松本稜(トヨタ自動車)ら実業団選手についてレースを進めた。

6000mを通過すると川瀬は作田・松本の前に一旦出るも、作田との並走状態が続く。レースが動いたのは残り200mほどになった時。川瀬がスパートをかけた。作田はついていくことができなかった。そのまま川瀬は後続と差を広げて、フィニッシュをする。

記録は目標タイムである28分30秒を上回る28分26秒37だった。1980年に川口孝志郎(中京大)が樹立した28分38秒2の東海学生記録を39年ぶりに更新した。これで川瀬が持つ東海学生記録は3種目となった。

中高生ランナーにとって箱根駅伝出場は大きな夢であり、目標であるだろう。箱根駅伝に出場するために、関東の大学を選ぶ選手が多いのが現実である。しかし川瀬は関東の大学でなくても結果を出すことが可能であると示してくれた。

様々な事情で関東の大学に進学できない選手もいるが、川瀬の走りは彼らに希望を与えているのではないだろうか。大学を卒業するまであと1年と少し。その間に川瀬はどれだけ記録を更新することができるのだろうか。来年のトラックシーズンが待ち遠しい。

(「学生陸上スポットライト」野田しほり)