11月2日より2020年東京オリンピック野球競技の予選を兼ねたWBSCプレミア12が行われている。今回はこれにちなみ、過去のオリンピック予選のチケット半券を取り上げたい。

この半券は2007年12月に台湾で行われた北京オリンピック野球競技のアジア地区予選を兼ねた第24回アジア野球選手権大会のもの。大会ロゴと予選も含めた参加国の国旗があしらわれた国際大会らしいデザインの全日共通の常備券だ。日付やカードなどは下部に試合ごと印字されるスタイルとなっている。

印字された事項に「中華隊06日本」とあるが、「中華隊」とはチャイニーズタイペイオリンピック委員会の現地での表記。「06」は日本、台湾、韓国、フィリピンの4ヵ国参加総当たり戦のGAME6=第6試合を示している。大会最終日にホームの台湾が登場する最も人気のあったプラチナチケットで開催地台中の日本人会経由でなんとか入手できたのだった。

いわゆる「チャイニーズタイペイ方式」は台湾の主権や国家承認の問題をオリンピックをはじめとするスポーツの場においては棚上げする裏ワザみたいなもので、当事国である中台はもちろんのことIOC全加盟国の微妙なバランスと取り扱いの上に成り立っている。日本のメディアがチャイニーズタイペイを地域名称としての「台湾」と呼称、表記するのも双方の顔を立ててのことだ。

ただこのチケットは注目すべきことに「中華隊」と印字してあるが、チケットにデザインされた参加国の国旗(右端)にはチャイニーズタイペイオリンピック委員会の「梅花旗」ではなく、中華民国の国旗である「青天白日満地紅旗」がある。この大会は北京オリンピック予選のため、開催国枠で出場する中国が参加していなかった。中国不参加、台湾開催ならではのデザインともいえる。重箱の隅をつつくようなことだが、ある種の「マニア」にはたまらないポイントだろう(笑)

2007年12月3日 台中インターコンチネンタルスタジアム 
日本 100000603 10
台湾 000002000 2
○ダルビッシュ、藤川、上原 - 里崎
●陽建福、耿伯軒、倪福徳、曹錦輝 - 高志綱、陳峰民
(本)陳金鋒2号(ダルビッシュ)、新井1号(曹錦輝)

この大会は優勝チームのみ五輪出場権を獲得でき、2、3位は翌年3月の大陸間プレーオフに回ることになっていた。日本はフィリピン、韓国に連勝しており、もし負けても0対1か1対2なら失点率の差により出場権が得られたが、気持ちよく五輪へ臨むためには勝ちたい試合だった。

だが序盤は接戦になり、日本が初回に先制したものの、6回にダルビッシュ有が陳金鋒に逆転2ランを打たれ逆転を許してしまう。しかしヒヤリとしたのはここまでで、7回にサブローのスクイズで同点に追いつくと、その後は猛攻を見せ6点をとるビックイニングに。最終回には新井貴浩のだめのダメを押す一発も飛び出した。投手陣もダルビッシュから藤川球児、上原浩治と盤石のリレー。10対2と快勝したのだった。

現在では公式に「侍JAPAN」と呼ばれる野球日本代表チームだが、当時は通称で、むしろ星野仙一監督の名前をとり「星野JAPAN」と呼ばれることの方が多かった。前年のWBCでは世界一になっており、この時点で多くのファンは翌年夏、北京での「星野JAPAN」の躍動を信じて疑わなかったのだが、五輪ではキューバに敗れ、韓国にコテンパンにやられ、3位決定戦ではマイナーリーガーと大学生で構成されたアメリカにも負けて、4位と散々な結果に終わった。

この半券を眺めていると、予選通過時の期待と高揚感、五輪で負けたときの落胆が同時に蘇ってくる。
(「プロ野球半券ノスタルジア」石川哲也)