全日本大学駅伝のスタートとなる愛知県名古屋市・熱田神宮は朝から快晴だった。7区にタスキが渡る頃、陽は出ているものの三重県津市には薄っすらと雲が出始めていた。青学大の〝エース格〟𠮷田圭太がタスキを受け取ったのは3番目。先頭を行く東海大とは1分3秒のビハインドだった。スタート前、𠮷田は前半区間の選手に「1分以内だったら僕が先頭に立つ」と伝えていたという。

𠮷田は昨年度の学生駅伝すべてで区間賞(出雲4区、全日本6区、箱根9区)を獲得している。現在の青学大を支えるエースといってもいい。そんな𠮷田は在籍する青学大地球社会共生学部のカリキュラムで、2月から約5カ月間ニュージーランドに留学した。

4月には一時帰国して、兵庫リレーカーニバル1万mに出場。日本人学生と集団を作るのではなく、実業団の外国人選手に食らいついた。しかし、終盤に力尽きて、目標にしていたユニバーシアード代表の座を逃した。その後は目覚ましい活躍を見せている。

7月のホクレン北見大会5000mで13分49秒33の自己ベスト。9月の日本インカレ5000mではさらに記録を伸ばす13分43秒54でゴール。日本人トップ(総合3位)となった。

迎えた出雲駅伝では3区を任され、23分58秒で区間新記録を樹立するも、東洋大・相澤晃、駒澤大・田澤廉、國學院大・浦野雄平に阻まれ区間賞には届かなかった。全日本では田澤が当日変更で7区にエントリー。𠮷田はスーパールーキーのことを当然意識しただろう。

𠮷田は走り出してから800mほどのところで前を行く順大・澤藤響を一気に追い越した。予定では10kmまでにはトップの東海大を捉え、独走態勢に入る予定だったという。しかし、思うようにペースが上がらず、東海大・松尾淳之介に追い付いたのは13kmを過ぎたあたりだった。

𠮷田は松尾とデッドヒートを繰り返し、2秒先にアンカーの飯田貴之へタスキを渡した。𠮷田は52分24秒という記録で区間2位。区間賞を獲得したのは駒大・田澤で52分09秒だった。

駒大のスーパールーキー田澤廉、出雲駅伝で衝撃デビュー

レース後、𠮷田は20〜30秒の差をつけてタスキを渡したかったと語った。原晋監督も今春卒業した森田歩希と比較して、30秒突き放す力がないところがチームの大黒柱、エースと言われない所以であると𠮷田について言及した。そして、「確実に走れる力はあるんで」と話を締めくくった。厳しい言葉には大きな期待が込められているように感じた。

次の箱根駅伝に向けては、「相澤さんと勝負したい」と𠮷田は口にした。東洋大・相澤晃は全日本3区でも圧倒的な区間新を叩き出すなど、学生長距離界のエースと呼ばれる選手。𠮷田が自身の目標を達成したとき、原監督に大黒柱と認められるだけでなく、日本長距離界のエースとしての道が開けるだろう。

(「学生陸上スポットライト」野田しほり )