前回、自信を強化するためにポジティブシンキング(思考)の心理的スキルを身につけるよう記しましたが、そのポジティブシンキングについて説明しようと思います。

「精神力」の正体は5つの心理的スキル

競技中や練習中において、プレッシャーや失敗、乗り越えなければならない壁といったストレスが生じるでしょう。そのストレスをどのように解釈するのかが重要になってきます。

例えばプレーに失敗した場合、それについて落ち込んでしまう人もいれば、それを糧に再挑戦しようと失敗を前向きにとらえようとする人もいます。前者のようにストレスを不利益なものと解釈し、パフォーマンスに対してマイナスに働くような考え方を「ネガティブシンキング」と言います。一方の後者のようにストレスを有益なものとして解釈し、パフォーマンスに対してプラスに働くような考え方を「ポジティブシンキング」と言います。

ネガティブシンキングは不安や恐怖を生じ、マイナス思考に陥ってしまうと言われています。そこでネガティブシンキングに心が支配されないようマイナス思考を排除し、ポジティブシンキングになるよう心を訓練することが必要となってきます。心をポジティブにコントロールし、良いパフォーマンスに向かわせようと方向づけるのです。

ただし、ネガティブシンキングにも良い面があります。ネガティブシンキングが自身への批判的な思考となり、良いパフォーマンスを行うために自分の力を過信せず、向上するために努力する場合です。逆に単なるポジティブな思考は、自分の思うようにならない状況は想定していないので、自分にとって不利な状況になってしまうと動揺や落胆をしやすくなることがあるのです。

そういったポジティブシンキングによる悪い影響が起きないよう、ポジティブな〝反事実的思考〟が行えるようになることを薦めたいと思います。

反事実的思考とは、実際には起こらなかったことが起きたらどうなっていたか、と考えることです。これを、ポジティブな方向に想像するのです。

例えばバレーボールのセッターが、オープン攻撃を選択してトスを上げ、それが失敗に終わったとします。ネガティブな反事実的思考だと「もっとスパイカーにうまくトスが上げられていたら……」と考えます。しかしポジティブな反事実的思考だと「クイックでの攻撃、またはバックアタック、またツーアタックを選択したらどうだっただろう?」と考えます。失敗や戦略ミスを後悔するのではなく、ほかの選択肢や新たな戦略を想像するのです。

このポジティブな思考により、状況によってさまざまな対応策を予測することができ、自分の力を過信することなく問題の解決に向けて状況をコントロールすることができます。さらに想像力を高められることで、どんな状況が訪れたとしても良いパフォーマンスをするための準備を整えることもできます。

スポーツシーンでは、あらゆる状況においてもかかるストレスを避けることはできません。しかしそれを不利益なものとして捉えるのではなく、ポジティブな反事実的思考によってストレスを乗り越える方法を探し出し、目標を達成するための有益なものとして捉えられるよう目指してみてください。そういったポジティブシンキングが習慣づくことによって、「自信」が自然と芽生えているでしょう。

※『note』より加筆・修正。

(「パフォーマンスを上げるためのスポーツ心理学」松山林太郎 )