現在においても、スポーツで心理面についての強化を想像すると、「精神力」を思い浮かべる人が多いと思います。しかし精神力の強化とは、ただ猛練習をすることにつながってはいないでしょうか。精神力というのはあいまいな言葉なので、具体的に何を強化すれば良いのか分からないことが要因にあるからです。

そこで精神力について具体的な内容を明確にし、スポーツにおける精神力が何で構成されているのかを知りましょう。

1.競技意欲
2.精神の安定・集中
3.自信
4.作戦能力
5.協調性

以上の5つが、精神力を構成する要素として明らかにされています。精神力を鍛えるということは、具体的に示すとこの5つを鍛えることになり、これらを心理的スキルとして置き換えてそれぞれ身につける必要があるということになるのです。その上で、まず自分自身にどの心理的スキルが欠けているのか、またはどの心理的スキルが備わっているのかを認識する必要があります。

そして、自分が最も欠けていると思われる心理的スキルについて重点的にメンタルトレーニングを始めてみましょう。

まず〈競技意欲〉については、「忍耐力」や「闘争心」、「自己実現意欲」、「勝利意欲」が主な内容になり、「目標設定」や「サイキングアップ」の心理的スキルを身につけると良いでしょう。「目標設定」と「サイキングアップ」については以下にトレーニング方法を記しました。

効果が表れるような「目標」を設定する方法

緊張をコントロールするメンタルトレーニング③

続いて〈精神の安定・集中〉は、「自己コントロール能力」や「リラックス能力」、「集中力」が構成内容になりますが、「リラクセーション」や「集中力」の心理的スキルが必要になります。「リラクセーション」と「集中力」についても以下に紹介した通りです。

緊張をコントロールするメンタルトレーニング①

「集中力」は簡単なトレーニングで養うことができる

3つ目の〈自信〉については、「自信」のほかに「決断力」の内容が含まれています。これらは「ポジティブシンキング」の心理的スキルが必要となりますが、これについてのトレーニング法は次の回で触れることにします。また「目標設定」においても自信を得ることができます。

4つ目の〈作戦能力〉は、「予測力」や「判断力」の内容で構成されます。これには「イメージ」の心理的スキルが関係してきますが、トレーニング法についてはこちらも次々回の「イメージトレーニング」で紹介します。また後に「知覚スキル」という技術の習得について詳しく説明しますが、こちらも参考になると思います。

最後〈協調性〉については、「チームワーク」の心理的スキルが関係します。また後日チーム作りについて記しますので、それを参考にスキルの向上を目指してもらいたいと思います。

精神力を構成する5つの内容と、それぞれに伴う心理的スキル

図で分かりやすくまとめましたが、以上に挙げた5つの精神力の内容で自分が身につけたい心理的スキルは見つかりましたでしょうか。もし自分自身についての欠点を理解しきれていない、または指導者が選手たちに明確に自分自身の欠点を把握してもらいたい場合は、自分が持っている心理的スキルを測る質問紙も販売されています。

まずは選手自身が持つ心理特性を理解して、弱点の克服に向けてメンタルトレーニングを始めてみましょう。

※『note』より加筆・修正。

(「パフォーマンスを上げるためのスポーツ心理学」松山林太郎 )