前回の記事が最低限として押さえておきたい目標設定の内容になりますが、これを選手が自ら作成した場合には、指導者も共有して適切なアドバイスができるようにしておく必要があります。練習の目標や試合での目標が具体的であり、適度な難易度で設定されているのか、他者の視点からの評価が必要であるためです。また、選手によっては自分の目標の価値を他者に認めてもらいたいという気持ちがあります。目標が効果的なものとなるよう、指導者側の注意点について記しておきます。

まず、選手の能力水準を正確に把握しておくことです。そして、選手がその能力レベルに応じた目標に向かう姿勢ができていなければなりません。そのため目標達成する意味や、努力すれば達成できることが認知できるよう、内発的動機づけを損なわせない程度に関与する必要があります。そして目標の結果や成果について評価する段階になれば、それらを参考にして選手に反映して伝えられるよう情報をフィードバックさせます。その評価が目標に到達しているようであれば、称賛し、新たな目標設定を促すことができるでしょう。

しかし目標に到達しなかった場合には、モチベーションが低下する可能性もあります。その際には、目標設定のレベルを変更することも検討しなければなりません。やる気を維持できるよう、選手とコミュニケーションを取って解決しましょう。

また何より重要となるのが、選手を勝敗などの結果目標のみで評価せず、プレー(行動)目標について評価してあげることです。たとえ敗北してしまったり結果的に出場枠を獲得することができなかったとしても、良いプレーができていたのであれば、そこを褒めてあげることが選手のモチベーションに大きく関わります。

選手の努力が向上につながっていることを評価することは、選手のモチベーションを損なわせません。個人的な課題や行動目標による成長を実感することで内発的動機が高まることが大事なのです。そのためにも、指導者は過度に選手の目標に関与することなく、自主性を重んじさせながらモチベーションを維持させましょう。

※『note』より加筆・修正。

(「パフォーマンスを上げるためのスポーツ心理学」松山林太郎 )