自発的にモチベーションを高めるには、〝目標設定〟を行うことが効果的です。おそらくほとんどのスポーツ選手は何らかの目標を掲げていることでしょう。「全国大会に出場する」や「強豪校に勝つ」といったように、自分またはチームが目標を設定し、それを目指して練習に取り組んでいると思います。このように目標設定を決めることで、モチベーションを高めるだけではなく、その目標を達成することで自信をつけることができます。

しかし設定した目標が適切なものでなければ、モチベーションを高めることはできません。たとえ目標を達成したとしても、それが自信を与えてくれるものでなければ意味がありません。また目標達成に失敗したことによって自信を喪失し、モチベーションを低下させてしまうこともあり得ます。

目標を設定する場合、自分やチームに効果が生まれるよう適切な目標を決めなければならないのです。単純に「全国大会に出場する」や「強豪校に勝つ」といったような目標設定をしていないでしょうか?

そこで、目標を達成することで自分の能力への自信がもたらされる〝達成目標〟について述べていきます。この達成目標は2種類に分けられ、〝課題目標〟と〝自我目標〟というもので区別されています。

まず課題目標とは、練習や努力によって能力を高めるほか、熟達することを重視する目標になります。例えば「自己記録を更新する」や「バントを確実に決められるようになる」といったものです。または「マインドフルネス瞑想を毎日行う」のように、メンタルトレーニングを行う目標もあるでしょう。

こういった目標は、自分自身の向上を目的としていることから内発的な動機づけとの関連が深く、能力についての自信の有無に関係なく選手が目標に向かって挑戦できるものになります。そして目標に達成することで、自信を生むのです。自分の能力はまだまだ向上すると考えられるなら、課題目標を立てることも難しくないはずです。自分の能力の程度を考慮でき、目標を自身でコントロールしやすいため、継続的に目標へ挑戦し続けやすいとされています。

一方の自我目標は、他者と比較して優位になることで、能力で高い評価を得ることを目標としたものになります。先に挙げた「全国大会に出場する」や「強豪校に勝つ」のような例がこれにあたります。一般的にはこのような目標を掲げる選手が多く見られますが、目標を達成する上で成果として分かりやすいことがあるからかもしれません。

しかしこの自我目標は、自分の能力に自信がある場合には挑戦して努力し続けられるのですが、自分の能力に自信が持てない場合には目標に対して諦めてしまうようになります。また達成しやすい低い目標や、達成できないほどの高い目標を設定することになると、目標へのチャレンジから逃れようとしてしまいます。そして自分の能力を相手との比較に基準を置いているため、有能感を自身の成長よりも勝利などの結果によって感じるようになります。さらには自我目標を持つ選手ほど、内発的な動機づけや競技意欲が、課題目標を持っている選手よりも低いという研究結果も報告されています。

したがって、自我目標を持つことよりも、課題目標を持ってスポーツを行うことが推奨されています。

しかしながら、競争場面にあるスポーツでは勝利などの結果が求められ、選手自身も「全国大会出場」や「優勝」のような成果を得たいでしょう。自我目標を設定することは避けられないものであると思います。

そこでどうするべきか、方法があります。もし自分の能力に自信が持てていないようでしたら、無理に自我目標を設定しないほうがいいでしょう。しかし、モチベーションや自信が上がるのであれば、自身の能力を考慮した適切な自我目標を設定しましょう。そして同時に課題目標も立て、目標を達成するために挑戦をし続けていきましょう。

※『note』より加筆・修正。

(「パフォーマンスを上げるためのスポーツ心理学」松山林太郎 )