スポーツでは「モチベーション」という言葉がよく使われています。日本語にすると「動機づけ」や「やる気」という意味です。

人が行動することの多くには理由があるのですが、この理由を〝動機〟と言います。そして、何かのきっかけによって動機が生じ、それによって目的に向かって行動するよう方向づけられる過程を〝動機づけ〟と呼んでいます。

この動機づけはスポーツを行う場合においての前提条件になり、選手それぞれの練習や試合への取り組み方と密接につながっています。そのため動機づけ(モチベーション・やる気)が高い場合と低い場合によって、スポーツへの取り組み方が違ってくるのです。

動機づけは、大別すると2つに分けられています。ひとつは〝外発的動機づけ〟、もうひとつは〝内発的動機づけ〟です。

外発的動機づけは、報酬や義務感、強制などによってスポーツに取り組んでいる場合にあたります。優勝するためや賞金を得るため、監督に怒られないためにスポーツを行うようなケースが想像しやすいでしょうか。自分自身以外からの影響を受け、スポーツが目的を達成するための手段となって行っている場合になります。

一方の内発的動機づけは、スポーツを手段としてではなく、自分自身が活動自体に価値があるものと考えて行っていることになります。スポーツを行うこと自体が目的となっているので、そこから得られる快感や満足感を求める動機づけです。この内発的動機づけが高いと、出来なかったプレーが出来るようになることで喜びや満足を感じ、〝有能感〟が高まります。また、知識や技能を高めようと学ぶことを志向する〝熟達志向〟になり、自分で決定することによって自らが進んで取り組む〝自律性〟も高まるとされています。

このような内発的な動機づけは、外発的な動機づけと比較してスポーツ活動への継続性が高いとされ、練習や運動のパフォーマンスを高めることにつながっていると考えられています。

例えばプロ野球観戦の趣味が高じて草野球を始め、技術の上達まで実感できるほど楽しんでいるようなケースは、内発的な動機づけが大きく働いているでしょう。一方、その草野球チーム内では人数を埋めるために、義務感で参加しているメンバーがいるかもしれません。こういう人は、外発的な動機づけが働いているといっていいでしょう。

このように比較をされると、外発的な動機づけではなく、内発的な動機づけを高めてスポーツに取り組むのが良いと考えるでしょう。しかし現実的に考えてみると、外発的動機にも強く引きつけられるケースがあります。プレーすること自体が楽しいからスポーツを行っているという動機があれば、同時に勝利したいからという動機、監督に認められたいという動機もあるでしょう。またプロの選手であれば、金銭的な報酬の影響や他者からの評価を避けることはできません。動機づけは、ひとつの要因だけで作用することはほとんどなく、内発的にも外発的にも影響を受けています。

そこで、内発的動機づけと外発的動機づけが連続体として捉えられると考えたのが〝自己決定理論〟と言われるものになります。

これは、外発的動機づけを4つに分類し、外発的動機づけの中でも自律性の低いものから高いものに分けられています。最も自律性の高い外発的動機づけは内発的動機づけとほぼ同様の行為が見られ、外発的によって影響されながらも自己が決定した動機によって行動している場合があるということです。外発的動機づけの中でも、自己決定を行っているケースが低い順に4つを以下に挙げます。

1.外的調整:指導者の指示の影響が強すぎ、選手が仕方なく練習を行っているようなケース。
2.取り入れ的調整:練習は行っているが、練習をしないと罪の意識を感じるので、義務感から行っているようなケース。
3.同一視的調整:スポーツの目的の価値が自分の行動の価値と同一化し、自分にとって重要であるから練習を行っているようなケース。
4.統合的調整:スポーツの目的の価値と自分の行動の価値が統合され、目的を達成するために練習を行っていてもそれを自発的に行っているようなケース。

このように、同一視的調整や統合的調整の外発的動機づけであれば、内発的動機づけにあるような自律性が強く作用していることが分かります。例えば全国大会に出場したい、プロの選手となってスポーツを職業として生活していきたい、といったような外発的な動機づけがあっても、その目的を達成するために自らが努力するのであればモチベーションを高く維持することができるでしょう。

そして実際に良い結果を残せるのは、より内発的に近い動機が働いている選手であると思います。外発的であれ内発的であれ、重要なのは「自律的」な動機づけによってやる気を高めてスポーツを行うことが重要なのです。

※『note』より加筆・修正。

(「パフォーマンスを上げるためのスポーツ心理学」松山林太郎 )