僕の周りでは、テレビのニュースに感化されて東京五輪のチケットを申込んだという友人が多い。申込み初日のアクセス集中による大混乱を他人事として見ていたのに、いざ「申込締め切りまであと〇日」というニュースが流れ始めると、駆け込みで〝何となく〟申し込んでみたのだとか。その後チケットに関する話題は聞かないから、どうやら誰も当選はしなかったらしい。

チケットにまつわる狂騒曲は一段落したものの、各競技の五輪代表争いはここから本格的な戦いが始まるだろう。そんな中、カーリングでは2022年の北京五輪をかけた本格的な戦いが今シーズンから始まる。そこで今回は、その理由にも触れながら今シーズンの大まかなスケジュールと注目ポイントを紹介していこうと思う。


【1~4日】
●どうぎんカーリングクラシック(どうぎんカーリングスタジアム、札幌市)
【9~12日】
●アドヴィックスカップ(アドヴィックス常呂カーリングホール、北見市)

どうぎんカーリングクラシックは2015年から開催され、翌2016年からはワールドカーリングツアー(以下WCT)と呼ばれる、大会の成績に応じてチーム世界ランキングを決めるポイントが与えられる国際大会の1つ。大会公式WEBサイトでは、決定した出場チームの他、観戦チケット販売のお知らせも既にリリースされている(どうぎんカーリングクラシック公式サイト)。今年から8月開催となったアドヴィックスカップも、今年からWCTに組み込まれ、従来の男女混合による大会方式から、男女別の大会方式に変わっている。

注目ポイントは、5月にチーム発足を発表したTM軽井沢の戦いぶりだ。TM軽井沢のメンバーは、平昌五輪男子代表の両角友佑、公佑兄弟と、2019年世界選手権代表の岩井真幸、宿谷涼太郎の4人と実績は充分。今年の世界選手権で4位の好成績を残したコンサドーレ札幌との戦いは、要注目だ。

11月
【2~9日】
●パシフィックアジアカーリング選手権(深圳市、中国)

パシフィックアジアカーリング選手権(以下PACC)は、パシフィックアジアカーリング連盟に所属する国と地域が、パシフィックアジア王者を決める大会だ。

注目ポイントは、今シーズンの世界選手権をかけた日本、中国、韓国による熾烈な戦い。パシフィックアジアの世界選手権出場枠は、本来なら男女ともに2つだが、今回に関しては、男子の出場枠が1つしかない(昨シーズンの世界選手権で韓国が最下位になり、パシフィックアジア地域の出場枠が1つ減ったことによる)。PACCで出場権を獲得できない場合は、世界最終予選に回らなければならない。日本代表として出場する男子のコンサドーレ札幌と女子の中部電力は、一度シーズン序盤にピークを持ってくる調整の難しさもあるだろう。

12月
【18~22日】
●軽井沢国際カーリング選手権大会(軽井沢アイスパーク、軽井沢町)

同大会は、2014年にアジアで最初のWCTに認定された大会で、昨年は国内外から男女ともに15チームが参加。国内で一番大きな国際大会といっていいだろう。

注目ポイントは、シーズン半ばにさしかかった国内各チームの仕上がり具合。国内トップチームの直接対決が見られる可能性も高く、年の締めくくりとなる同大会は翌年2月の日本選手権を控えた前哨戦ともいえる。昨年は、スケジュールの都合によりロコ・ソラーレが不参加だったが、昨シーズンの日本選手権で国内チームに苦戦した教訓もあり出場する可能性が高そうだ。

2月
【8~16日】
●全農 日本カーリング選手権大会(軽井沢アイスパーク、軽井沢町)
【25~1日】
●全農 日本ミックスダブルスカーリング選手権大会(どうぎんカーリングスタジアム、札幌市)

カーリング日本一を決定する国内最高峰の大会は、世界選手権の日本代表をかけた戦いでもある。そして、最大の注目ポイントは、今シーズンの日本選手権は北京五輪日本代表の選考に大きく関わるという点だ。北京五輪日本代表の選考方式は、

今シーズンと来シーズンの日本選手権を連覇したチーム
→北京五輪日本代表に決定
今シーズンと来シーズンの日本選手権の優勝チームが異なる場合
→両チームによる五輪日本代表決定戦を行い、その勝者が北京五輪日本代表に決定
(ただし両チームより世界ランク上位のチームが存在する場合は、そのチームを含めた3チームによる代表決定戦)

つまり、今シーズンの日本選手権を優勝したチームは、北京五輪日本代表に王手をかけることになる。冒頭で、北京五輪をかけた本格的な戦いが今シーズンから始まると述べた1つ目の理由はここにある。

3月
【14~22日】
●世界女子カーリング選手権大会(プリンスジョージ、カナダ)
【28~5日】
●世界男子カーリング選手権大会(グラスゴー、スコットランド)

4月
【18~25日】
●世界ミックスダブルスカーリング選手権大会(ケロウナ、カナダ)

世界選手権は、日本代表の活躍だけでなく、世界トップ選手のスーパーショットやハイレベルな好試合まで見どころ満載だ。そして、日本選手権が北京五輪日本代表をかけた戦いだとしたら、今シーズンの世界選手権は〝日本の北京五輪出場をかけた戦い〟になる。これが、北京五輪をかけた本格的な戦いが今シーズンから始まると述べた2つ目の理由だ。

カーリングの五輪出場権は、「五輪ポイント」と呼ばれる五輪前年と五輪前々年の世界選手権の成績によって与えられるポイントの合計で決まる。前回の平昌五輪を例に出すと、日本男子は2016年4位、2017年7位と2大会で五輪ポイントを重ねて20年ぶりの五輪出場を勝ち取った。一方、日本女子は2017年の世界選手権出場を逃したが、2016年の準優勝で五輪ポイントを稼いで五輪出場を決めている。五輪ポイントで出場権を獲得できなかった国は、世界最終予選で残りの出場枠を争わなければならない。上位下位に関わらず、1勝でも多く1つでも順位を上げて五輪ポイントを持ち帰ろうとする今シーズンの世界選手権は、昨シーズン以上に目の離せない熱戦が増えることが予想されそうだ。

東京五輪に向けた関心が高まりつつあるなかで、北京五輪に向けた戦いは静かに、しかし確実に始まっている。平昌五輪を機に、五輪に出場するまでの過程にも目を向けてみようと思っている方がいたら、今シーズンは丁度いいタイミングになるのではないだろうか。

(「ようこそ カーリングの世界へ」土手克幸 )