多くの人が、カーリングといえば冬というイメージを持っているかもしれないが、意外にシーズンは長い。日本のトップチームのシーズンインは、7月中旬に北海道北見市で開催される「アドヴィックスカップ」、または8月上旬に札幌で開催される「どうぎんカーリングクラシック」が通常だ。シーズン最終戦はチームによって異なるものの、カーリングの大会は5月上旬まで行われており、桜が散ってもカーリングシーズンは終わらない。新シーズンを見据えての準備を考えると、今は〝ひと時〟のオフシーズンというわけだ。

僕は当コラムの第1回目で、日本カーリング界にとって、2018-2019シーズンは「4年に一度」のフィーバーから脱却するうえで大事な1年になるのではないか? と述べた。そこで今回は、新シーズンが始まる前に2018-2019シーズンを振り返って総括をしてみたいと思う。

「4年に一度」を脱却できる? 今冬の〝第1投〟が大切なワケ

カーリング日本代表の活躍

2018-2019シーズンのカーリング日本代表は、好成績を残した。昨年11月のパシフィックアジアカーリング選手権では、女子日本代表のロコ・ソラーレが準優勝、男子日本代表のコンサドーレ札幌が優勝し、共に世界カーリング選手権の出場権を獲得。そして、今年の3~4月に開催された世界カーリング選手権(女子3月16日~24日、男子3月30日~4月7日)では、女子代表の中部電力、男子代表のコンサドーレ札幌が共にラウンドロビンを突破して4位と活躍した。女子日本代表の4位は2016年の準優勝に次ぐ成績で、男子日本代表の4位は2016年の4位と並ぶ最高成績だ。また、女子は韓国と中国もラウンドロビンを突破し、決勝トーナメントに進んだ6チームのうち3チームがアジア勢となった。女子カーリング界に限って言えば、アジアは、カナダ、アメリカの北米や、スウェーデンやスイスを始めとする欧米トップに肩を並べる一大勢力になったといっていいかもしれない。

日本代表に話を戻すと、男子代表のコンサドーレ札幌の戦いぶりが特に目を引いた。ラウンドロビンで強豪のカナダ、スコットランドを破り、決勝トーナメントでも平昌五輪金メダルのアメリカに勝利するなど初出場とは思えない快進撃。リードの阿部晋也からスキップの松村雄太まで4人が高いショット精度でつなぎ、シンキングタイムをフル活用し密にコミュニケーションをとる姿は、2016年世界カーリング選手権で準優勝した時のロコ・ソラーレを彷彿とさせた。また、山口剛史と藤澤五月のミックスダブルス日本代表の活躍も見逃せない。4月20日~27日に開催された世界ミックスダブルスカーリング選手権では過去最高成績を残した昨年と同じく5位。準々決勝でオーストラリアに5-6と惜しくも敗れたが、優勝したスウェーデン、準優勝のカナダと同じグループになったラウンドロビンを、両者と並ぶ6勝1敗で通過するなど、その実力が確かであることを証明してくれた。

ちなみに、同じく五輪翌シーズンとなる2015年世界カーリング選手権日本代表の各成績を紐解いてみると、

男子(SC軽井沢クラブ)6位
女子(北海道銀行フォルティウス)6位
ミックスダブルス(平美智子、苫米地賢治)10位
※平美智子は、ソチ五輪女子代表の苫米地美智子の旧姓

いかに2018-2019シーズンの日本代表が高いレベルで好成績を残したかがわかるだろう。

競技シーンの外でも新たな変化

2018-2019シーズンは、カーリング日本代表の活躍だけではなく、アイスの外でもポジティブな変化を感じることができた。

その1つがテレビ放映された大会が増えたことだ。前シーズンまで放映されていたのは、12月下旬開催の軽井沢国際カーリング選手権(BS朝日)、1月下旬~2月初旬開催の日本選手権(NHKBS1)、3月中旬から4月初旬開催の男女の世界選手権(NHKBS1)。2018-2019シーズンはこれに加え、11月3日~10日に開催されたパシフィックアジアカーリング選手権(BS日テレ、CS日テレジータス)、4月20日~27日に開催された世界ミックスダブルスカーリング選手権(NHKBS1)が新たに放映された。これによって、インターネット配信まで関心を向けないライトなファン層に、1か月以上早く、そしてGW直前までカーリングの試合を視聴する機会を与えることができた。

また、女子日本代表やミックスダブルス日本代表のオフィシャルスポンサー契約を結び、日本で開催される主要大会の協賛をはじめとして、日本カーリング界をサポートしてきたJA全農が、今年2月に男子日本代表のオフィシャルスポンサー契約を日本カーリング協会と新たに締結したのも嬉しいニュースだ。2018-2019シーズンの男子は、平昌五輪で20年ぶりに五輪出場を果たしたSC軽井沢クラブの解散という衝撃的なニュースからスタートしたが、前述したように新たに男子日本代表となったコンサドーレ札幌が予想以上の活躍を見せてくれた。解散したSC軽井沢クラブのメンバーは、移籍、新チーム結成、コーチ就任とアプローチの方法は違えども男子カーリング界に新たな風を吹き込んだ。そして、先月下旬にはSC軽井沢クラブのスキップを務めた両角友佑が新チーム「TM軽井沢」の結成を発表。楽しみなニュースが続いている男子が存在感を増せば、日本カーリング界はもっと盛り上がるはずだ。

上記以外にも、地域に目を移せば、今年の秋から冬にかけて京都と大阪でカーリングシートを併設したアイスアリーナが開業予定という明るいニュースもある。

「4年に1度」のフィーバーからの脱却に向けて。まずはいいスタートを切った1年と言ってもよさそうだ。

(「ようこそ カーリングの世界へ」土手克幸 )