フォームなど技術的な面の向上や修正を行う際に、自分の身体の動きを改善しようと筋肉の動きや動作に注視したことはないでしょうか。

例えばバスケットボールのシュート動作で手首の動きに意識を向ける、バレーボールのレシーブで肘や膝の使い方に注意する、といった身体内に焦点を当てているケースです。前回に説明した「狭く内的な注意」の中でも、より身体内の動きに注意してフォームを修正しようとすることです。これを〝内的焦点〟と言いますが、パフォーマンスを高めるには内的注意に焦点を当てるよりも、身体外の〝外的焦点〟に注意を向けたほうが良いという研究結果が得られています。

初心者が技術を習得する初歩的な段階では内的焦点に注視し、まず技術を身につけることが優先されます。しかしある程度技術を習得している段階であれば、改めて身体内の動きについて注視するのではなく、相手ゴールやボールといった外的焦点を注意したほうが良いのです。

バスケットボールでなかなかシュートが入らなかったとしても、膝や手首など身体内に原因があると注意を向けるのではなく、相手ゴールに焦点を当てているうちに技術が修正されていくはずです。

これは、以前「意識的処理」について説明した内容と似ていますが、習得して自動化された動きに内的な部分に焦点を当てることで無駄な力が入り、自動化された動きが崩れてパフォーマンスが落ちてしまうと考えられています。したがって、指導者も選手の技術の向上や改善においては体の使い方など身体の動きを指摘しすぎず、身体外のものに意識を向けさせて指導することで技術の改善が成されると思っていてもいいでしょう。

そして選手自身としても、あまりフォームや筋肉の動きにとらわれすぎることなく外的焦点に注意を向けると、意外と技術の上達がスムーズに行われるかもしれません。たとえ伸び悩んだとしても、あれこれ自分の動きばかりに意識を向けないようにしてみましょう。

※『note』より加筆・修正。

(「パフォーマンスを上げるためのスポーツ心理学」松山林太郎 )