2009年3月27日に行われた関西独立リーグ開幕戦のチケット半券。京セラドーム大阪で購入した当日券だが、いわゆる「ぴあ券」といわれる味気ないプリント印字のみ。独立リーグのチケットはたいがいホームゲームで通年使用する汎用券が用意されているものだが、プリント印字の方が経済的なのか? それともシーズン唯一の大阪ドーム開催の開幕戦ということで、このスタイルになったのか? 翌日に観戦した紀三井寺球場の紀州対明石戦は汎用券ながら、チームロゴが入ったものが用意されてただけにちょっと惜しい。

もう10年も前のことなので関西独立リーグといっても「?」かもしれないが、〝ナックル姫〟こと吉田えりがいたリーグといえばピンとくる向きもいるかもしれない。関西独立リーグは四国、BCに続く日本で3番目の独立リーグで、この日の大阪対神戸が記念すべきリーグ開幕戦。吉田えり登板の可能性もあり、史上初めて男性とともに女性がプロ野球でプレーする瞬間を見ようと、1万1592人もの観衆が集まった。

試合前には全4チームの選手が集合しオープニングセレモニーが行われ、石毛宏典リーグ顧問が開幕を宣言。投手に橋下徹大阪府知事、打席には関西にちなんだのか赤井英和が立つ豪華な始球式も行われた。

えりちゃん目当てだったこともあり試合の内容はさっぱり憶えていないが、試合中、スーツ姿の石毛顧問がスタンドに現れ関係者に挨拶して回っていた。当時の新聞によれば詳細なスコアは不明だが5対0で神戸が勝利。吉田えりは9回裏無死二塁から登板し、打者2人に9球を投げ、無安打1四球1奪三振だった。

吉田えりの身長は155㎝ということだが、大阪ドームのマウンドに立つとまあ小さいこと。投げるボールもナックルということもあるが、とてつもなくゆっくり。四球で出したランナーに走られたり、大きなファウルを一本打たれたりもしたが、ナックルで三振を奪うなど、球場は大盛り上がりとなった。

前途洋々に出帆したかに見えた関西独立リーグだが、開幕戦の僅か2か月後にはリーグの運営会社が資金難を理由に運営から手を引き、石毛も顧問を辞任。シーズン終了後には目玉の吉田えりも退団し、翌年には選手は無報酬でプレーするジリ貧状態に。チームが入れ代わり立ち代わり、内紛、分裂を繰り返して、2013年に活動を停止。現在の関西独立リーグは別組織になる。

吉田えりはその後も日米の独立リーグで男性とともにプレーし、2017年からエイジェック女子硬式野球で監督兼選手として現役を続けている。ナックル姫と呼ばれていた当時は17歳の女子高生投手で、現在もまだ27歳。昨年9月にはかつて所属していたBCリーグの事務局員と結婚したとのことだが、ナックルボーラーの使い手として、そして女子プレーヤーの草分けとして、もう一花咲かせてほしいところだ。

(「プロ野球半券ノスタルジア」石川哲也 )