3月16日からデンマークのシルケボーで開催されたカーリングの女子世界選手権。日本代表として出場した中部電力は、13チーム中4位という好成績で大会を終えた。

ただ、この結果にはそれほど驚きを感じていない。今シーズンの軽井沢国際カーリング選手権や日本選手権のパフォーマンスを見て、これぐらいはやるだろうと思っていたからだ。僕にとっては、6位でプレーオフにギリギリ滑り込んだ予選リーグの6勝6敗という数字の方が意外だったくらいである。

【予選リーグ成績】
(〇囲みは国別の世界ランク)
○10-4 スコットランド③
○9-5 アメリカ⑧
●7-10 ドイツ⑫
●4-8 ロシア④
○7-5 カナダ②
●4-11 韓国⑥
●1-7 デンマーク⑩
○10-4 フィンランド⑭
○9-3 ラトビア⑰
●6-7 スイス⑤
○6-4 中国⑨
●8-9 スウェーデン①

【プレーオフ】
初戦
○11-3 ロシア(予選3位)
準決勝
●3-6 スウェーデン(予選1位)
3位決定戦
●5-7 韓国(予選2位)

スコットランド戦、アメリカ戦の連勝で幸先いいスタートを切るも、ドイツ戦を落としてにわかに暗雲が立ち込めた。世界ランク上位のカナダを破って調子を取り戻すかに思われたが、デンマーク戦を落とし初めて黒星が先行してしまう。プレーオフ進出を見据えた星勘定を考えれば、格下と思われたドイツとデンマークからは、きっちり勝ち星を拾っておきたかったはず。

ガードストーンを置きにいくショットがハウスに入ってしまう。ガードストーンをかわせると判断してスイープを止めたストーンがガードに当たる。大会中盤までは、アリーナアイスと呼ばれる四方を客席に囲まれた会場のアイスコンディションを読み取るのに苦労していたように見えた。

ただ、それでも日本はプレーオフ進出を決めた。

終始ショットが安定し、快勝といえる内容の中国戦で6勝目を挙げると、プレーオフ進出が決定。勝敗で日本と並ぶ前年4位のアメリカと、チームは違えど2連覇しているカーリング王国カナダの追随を、直接対決の勝利でするりと振りほどいた。プレーオフ初戦では、同点で迎えた第4エンドの4点スチールでロシアの心を折って、準決勝へ進出。3位決定戦は、5-4で迎えた最終エンドに後攻の韓国に逆転されてしまったが、4位という結果は3年前にロコ・ソラーレが準優勝した快挙に次ぐ好成績である。

僕は、4位という成績に驚きを感じなかった。予選で2つの取りこぼしがあったにも関わらず、プレーオフに進出した。
そして、表彰台まであと一歩というところまで勝ち上がった。

それは、まさしく日本に地力があることの証明ではないか。

「ビッグマウスと思われるかもしれませんが1勝1敗1分けを目指します」

日本サッカーが初めてW杯に出場した1998年フランス大会。岡田監督は、予選リーグの組み合わせが決まった後にそうコメントした。あれから20年後、日本代表はベスト8進出を目標として大会に臨んでいる。その目標がビッグマウスでないことは、ベルギーと演じたロストフの死闘が語ってくれる。ベルギーに対峙した日本代表から感じたのは、「世界にどこまで通じるか」という謙虚さ溢れる挑戦ではなく、「どこが相手でも勝ちにいく」という勝利への貪欲な姿勢だった。

カーリングが五輪の正式種目になった長野五輪から20年後、女子日本代表として出場したロコ・ソラーレは銅メダルを獲得した。翌シーズン、国内には4強(ロコ・ソラーレ、中部電力、北海道銀行フォルティウス、富士急)と呼ばれる構図が生まれた。その中で世界選手権の切符をつかんだ中部電力は、勝ち星をとりこぼしながらも、プレーオフに進出して3位決定戦まで進んだ。今回、中部電力が出場したことで、4強の現所属メンバー全員が世界選手権を経験したことになる。

来シーズン、どのチームが世界選手権に出場しても、世界の強豪に自分たちの力がどこまで通じるのかを試す舞台にはならないだろう。プレーオフ進出は最低限の目標で、獲りにいくのは表彰台以上。

日本代表が世界に挑戦する時代はもう終わった。それが、世界選手権を見終えた今の正直な感想である。

(「ようこそ カーリングの世界へ」土手克幸 )