今はなき近鉄バファローズホームゲームのチケット半券。1枚目が藤井寺球場で行われたウエスタンリーグのもの(16年となっているが、2016年ではなく、平成16年だ)。2枚目は一軍の大阪ドーム内野自由席、3枚目は大阪ドームライト側のレストラン席で観戦した際にもらった外野席の半券だ。

2000年代半ばはプリント印字のチケットが主流になってきた時期だが、二軍だけでなく一軍も昔ながらの常備券にスタンプを捺すスタイル。しかもカード別ではなく使いまわしの効く汎用の常備券なのは、赤字球団ゆえの節約か?

ちなみにチケットの日付は2004年9月20日と21日。近鉄・オリックスの合併に端を発した球界再編騒動の真っ只中、選手会による史上初のストライキ直後のもの。汎用の常備券のためカードが記されていないが、藤井寺球場が近鉄対中日、大阪ドームの方は合併当事者である近鉄−オリックス戦だった。

藤井寺球場は大阪ドームのナイターを見る前に、ついでに足を伸ばしたのだが、当時2シーズン制だったウエスタンリーグで中日の後期優勝がかかっていた。その日つけていたスコアブックを確認したところ、下記のような試合だった。

【2004年9月20日 藤井寺球場】 
中日 700 004 010 … 12
近鉄 300 000 002 … 5
(中)〇野口、紀藤、高橋、遠藤‐小川、前田
(近)●宇都、栗田、朝井、佐藤、有銘‐鈴木、長坂
(本)仲澤(宇都)、筧(遠藤) 

この日は月曜日だったが、敬老の日で休日。秋晴れで観客もファームの試合だったが1000人くらい? の観衆があった。近鉄とオリックスの球団合併とともに、近鉄所有の藤井寺球場の取り壊しが発表されており、球場見納めの私のようなファンもいくらかいたのかもしれない。

一軍本拠地時代の重厚な風情が漂う

中日は野口茂樹が先発。この年は不調だったとはいえ、かつてのエース、MVP投手を投げさせたのはマジック1で優勝がかかっていたからか? 中日は2番手に紀藤真琴、スタメンには3番ライトで関川浩一が名を連ねていたが、この両名はオフに自由契約となり、新生球団の楽天に行くことになる。

試合はというと初回、いきなり中日の先頭打者、仲澤がレフトポール際に大きなあたりをたたき込み三塁塁審の手がグルグルと回った。近鉄の石渡監督が抗議に出ると「ファールやないか!」、「どこ見とんねん!」とヤジが飛ぶ。そして一瞬、静まったところで「コミッショナーを呼べ!」と一発。再編騒動の渦中、何の役にも立たず、ゴロネを決め込んだコミッショナー。ファールの判定への抗議に意味は通らないのだが、何ともおかしく関西らしいヤジ。スタンドに笑いが起きた。

そんなこんなで初回は中日が3安打、3四球で7得点したのだが、その裏、近鉄も2安打と失策絡みで3得点する大味な展開に。結局12対5で中日が勝ち、試合終了後に佐藤道郎監督が胴上げされた。

全面人工芝に張り替えられていたが、スコアボードは回転式のまま

この試合から15年が経った。藤井寺球場は取り壊され跡地は学校とマンションに。大阪ドームはその後、経営破綻し、現在はオリックスが所有。ネーミングライツにより「京セラドーム大阪」という名称になった。現在も現役の近鉄出身選手はこの試合に3番レフトで出場していた、現在ヤクルトの坂口智隆のほか、巨人の岩隈久志、ヤクルトの近藤一樹の3人。新規入会者のいなくなった近鉄バファローズOB会は今年限りで活動を終えている。

(「プロ野球半券ノスタルジア」石川哲也 )