自分がプレーしている際の「心と身体の関係」は、動きに意識を向けている場合と無意識に体が動いている場合に分けることができます。その両面が、プレッシャーによって意識の向け方に狂いが生じ、〝あがってしまう〟要因となっていることが明らかとなっています。

このあがり現象を理解する前に、まず動きを「意識してコントロールする」場合と「無意識にコントロールしている」場合について説明します。

運動することは、動きを意識してコントロールすることと無意識にコントロールしていることをうまく使い分けながら行われています。それぞれは〝意識的制御〟と〝無意識的制御〟と呼ばれています。プレーが上達していれば、基本は無意識に体を動かし、動きに修正が必要になるなどの状況が起きたときにはそこに意識を向けて動作を修正して運動をコントロールしているのです。

ゴルフで例を挙げると、初心者であるならば下半身への意識や腕の振り、頭の位置など自分の体に意識を向けなければならない箇所がたくさんあります。ですがある程度の経験を積むと、意識を向けなくても上手なスイングができるようになっています。これを〝自動化〟と言いますが、プレーが上達することで技術の自動化が進み、無意識的にスイングのコントロールができるようになっていきます。そして修正箇所に気づいた場合にそこへ意識を向けることで、悪いスイングを修正してしているのです。

スイングをして思うような打球が飛ばなかったとします。無意識にスイングした後で「少し下半身の体重移動が上手くいっていなかったな」と感じたとしたら、次のスイングでは上手な体重移動ができるよう修正することを意識して打つでしょう。

このように、プレーヤーは無意識的制御と意識的制御を上手に使って適切にプレーを調整しています。

しかし過度に緊張することで、無意識的なコントロールと意識的なコントロールが上手くいかなくなります。無意識に出来ていたスイングが出来なくなる、または意識を向けてスイングの修正が出来ていたことが出来なくなる。これらは、それぞれ〝意識的処理〟と〝注意散漫〟と呼ばれています。この両面についての詳しい話は、次回に説明しようと思います。

※『note』より加筆・修正。

(「パフォーマンスを上げるためのスポーツ心理学」松山林太郎 )