全国中学駅伝や高校駅伝も終了し、次は正月のニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝)と箱根駅伝だ! と言いたいところだが、2018年の駅伝はまだ大きな大会を1つ残している。12月30日に開催される全日本大学女子選抜駅伝競走、通称「富士山女子駅伝」だ。

この大会は10月に宮城県仙台市で実施された「第36回全日本大学女子駅伝」(以下、杜の都駅伝)の上位12校と、これらを除いた5000m7名のチーム記録上位8大学、全日本大学女子選抜、静岡県学生選抜の計22チームによって争われる。

大会の歴史は非常に複雑だ。2004年の第1回大会から06年までは埼玉で、07年から09年までは茨城で開催されていたが、テレビ局の主催離脱やスポンサー降板などを理由に4年間も〝休会〟状態が続く。13年に復活すると、舞台を静岡県の富士山麓へ移し、「富士山女子駅伝」として生まれ変わった。

大会の特徴は、10月の杜の都駅伝から区間数が1つ増えること(全7区間43.4km)、高低差172mにも及ぶ起伏に富んだコースで開催されること、前回まで立命大が5連覇を果たし、全12回のうち11回を制していることである。

区間数が増えれば選手層の厚いチームが有利となり、誰が起伏の激しい区間を担当するかによって、戦略に大きな幅が生まれてくる。これまでは立命大の独壇場だったが、立命大、2009年に立命大の7連覇を阻んだ佛教大を除けば、いずれの大学も初優勝となる。

では、今大会はどんなレースになるだろうか。まずは出場チーム一覧を見てみよう。

【杜の都駅伝上位12大学】
1 名城大学(東海)
2 大東文化大学(関東)
3 立命館大学(関西)
4 東京農業大学(関東)
5 松山大学(中四国)
6 京都産業大学(関西)
7 大阪学院大学(関西)
8 大阪芸術大学(関西)
9 東洋大学(関東)
10 玉川大学(関東)
11 日本体育大学(関東)
12 関西大学(関西)
【5000mタイムによる8大学】
13 佛教大学(関西)
14 白鷗大学(関東)
15 福岡大学(九州)
16 城西大学(関東)
17 順天堂大学(関東)
18 京都光華女子大学(関西)
19 関西外国語大学(関西)
20 中京大学(東海)
【選抜チーム】
21 全日本大学選抜
22 静岡県学生選抜

優勝候補筆頭は、10月の杜の都駅伝で2連覇を果たした名城大学だ。2年生エースの加世田梨花や、強力ルーキーの高松智美ムセンビ、和田有菜など、充実した戦力を誇る。富士山女子駅伝では過去4回準優勝を経験しており、悲願の初優勝と大学女子駅伝2冠を目論む。

杜の都で2年連続2位の大東大は、関谷夏希と鈴木優花によるダブルエースが強力。3年生の関谷は杜の都の最長区間5区で区間賞を獲得すると、12月上旬には現役学生最速となる10000m31分50秒17(学生歴代4位)を記録。1年生・鈴木も杜の都2区で12人抜きの区間賞を手にしており、2枚看板の牽引で初の栄冠を目指す。

杜の都3位の立命大は、この大会の絶対女王として6連覇を見据える。4年生で双子の加賀山恵奈、美里姉妹や、エースの佐藤成葉、杜の都4区、6区で区間賞を獲得した中田美優と真部亜樹など、厚い選手層で7区間あるレースを優位に運びたい。

その他にも10000m31分台の棟久由貴を擁する前回2位の東農大、前回5区で6人抜きの快走を見せた棚池穂乃香のいる京産大も上位候補で、前回6位の大阪学大は、主力の水口瞳が地元・富士市立高校出身。各校のエースたちによる区間賞争いにも注目したい。

この大会では特に最終7区が最大の難区間として知られ、平地の走力だけでは攻略できない激しい起伏が待ち構える。例年この区間で激しく順位が入れ替わっており、最後の最後まで目が離せない展開となりそうだ。

富士市役所発表の資料によると、12月30日午前の過去10年間での富士山が見られる確率は80%。快晴に恵まれれば、雄大な霊峰富士をバックに選手が駆け抜けることになる(※12月25日時点では晴れの予報)。

2018年の締めくくりとともに、平成最後となる富士山決戦。母校のタスキに青春を懸ける女子学生の走りに注目だ。

(「TASUKI-GIRLS」松永貴允 )