冬は学生スポーツの祭典が目白押しだ。なかでも毎年、クリスマス前後に行われる全国高等学校バスケットボール選手権大会、通称「ウインターカップ」の面白さはまた格別なもの。今回はいつもの「埼玉蹴球百花繚乱」特別編として「埼玉〝籠球〟百花繚乱」にあらため、男子バスケットボールの正智深谷高校を取り上げたい。

まずは正智深谷高校をざっと紹介する。筆者の青春時代は埼玉工業大学深谷高校、主に埼工大深谷と呼ばれていた。当時はなかなかのヤンチャな学校だった記憶がある。卒業生では芸人の土田晃之が有名だろう。2003年に現在の正智深谷高校と改称し、勉学では東大など超難関大学への合格者を輩出し、スポーツではバスケットボールをはじめ、サッカーやバレーボールなどが全国大会で毎年のように活躍するようになった。

男子バスケットボール部は3年連続県内大会4冠を達成し、ウインターカップには7年連続8度目の出場だ。これまでの最高成績はベスト16で、勝山大輝主将は「必ずメインコート(ベスト8)に行きたい。支えてくれている方々に結果で恩返しがしたい」と記録更新への気持ちは熱い。闘将・成田靖監督からは「今年のチームは史上最弱と言われてきた」そうだが、「へこたれちゃうとその先はない」と見事に発奮材料に変えてきた。

厳しい言葉でハッパをかけ続けた監督も「反骨心が本当に強いと思う」と選手の成長ぶりに目を細める。バスケットボール漫画の名作『スラムダンク』を地でいくようなド根性に指揮官も脱帽のようだ。監督は率先してミーティングをしたり、自主的に取り組んでいる姿を秘かに見守ってきた。大会目標を監督から掲げたこともなく、「本当によく頑張っていた。出場はまぐれじゃない」と直接、選手たちには伝えていない本心を口にしてくれた。

12月23日の1回戦は県立草津東高校(滋賀)。そこをくぐり抜けると、2回戦は夏の高校総体王者の開志国際高校(新潟)が待ち受ける。開志国際高校は小池文哉主将をはじめとする優良な人材がそろうが、正智深谷高校にも勝山主将やU18日本代表で192㎝の渡部琉選手らがいて決して負けてはいない。「僕たちは足を使って嫌がらせるバスケ。開志国際に勝って手応えを感じたい」と勝山主将。開志国際高校は2回戦が初戦だが、正智深谷高校は2試合目。場慣れする利もあり、監督は「チャンスはある」と愛弟子たちの活躍に期待する。

〝史上最弱〟と呼ばれたチームが高校生〝最強〟チームを打ち負かす──。『スラムダンク』でも描かれたような展開になるか。大事なことは「あきらめたらそこで試合終了だよ」ということだ。

(「埼玉〝籠球〟百花繚乱」松澤明美 )