話は少しさかのぼる。今年2月に開催された平昌五輪。現地で取材する私に、友人からこんなメールがきた。

「日本でもカーリングがすごく注目されてるよ!」

おおよその想像はついた。その競技を知らない人や普段は観ない人までも関心を寄せるオリンピック。その上、日本代表は女子が銅メダルを獲得して、男子も予選リーグ最終戦まで準決勝進出の可能性を残す健闘を見せたのだ。

スポットライトを浴びる日本代表を見て、カーリングは冬の人気スポーツとして定着していくかもしれない。韓国で、そう感じた。

いま思うと、僕自身初めて五輪の現地に向かい、その熱に浮かされていた部分もあっただろう。もしかすると4年前のソチ五輪のときもそうだったのかもしれない。そう自制しながらも期待せずにはいられなかった。

しかし、帰国後、その期待は少々甘かったと思い知らされる。

五輪日本代表のSC軽井沢クラブとロコ・ソラーレの選手がペアを組んで参加した日本ミックスダブルスカーリング選手権(3月14日~18日)は、会場に多くの人が詰めかけニュースでも大きく取り上げられた。一方で、チーム富士急が出場した世界女子カーリング選手権(3月17日~25日)や、チームIWAIが出場した世界男子カーリング選手権(3月31日~4月8日)になると、ニュースの数は激減する。

そして、連日のようにロコ・ソラーレの動向ばかりを取り上げ、必要以上に彼女たちに「そだねー」と「もぐもぐタイム」のリクエストを希望するニュースに正直、辟易してしまった。

理解できなくはないし、一概に否定することもできない。読まれることや見てもらうことが重要なメディアにとって、「そだねー」と「もぐもぐタイム」は格好のキーワード。そして、ロコ・ソラーレの選手たちが注目を浴びることで、カーリングに関心を持ってもらえるきっかけとなるならば、有難い。カーリングのロコ・ソラーレの選手たちが丁寧にメディアの要求に応えていたのもそのためだろう。話題が途切れてしまうよりは、継続的に取り上げてもらえる方がいい。

ただ、「4年に一度」のフィーバーから脱却するためには、改めてカーリングそのものに関心を向けてもらうことが必要になる。それは、ロコ・ソラーレの選手たちがカーリング界を代弁して訴えていた願いでもある。

カーリングそのものに関心を向けてもらうこと。その萌芽は平昌五輪の時点ですでにあった。

「カーリング初めて観たけど面白い!」
「カーリングって結構奥深い!」
「今回の五輪で一番注目してるかも」

現地で時折チェックしていたネット記事に対するコメント。そこには、「そだねー」や「もぐもぐタイム」に関するコメントに混じりながらも、カーリングの魅力に気付き始めている人達の反応が多く並んでいた。

その好奇心を地道に育てていくことが、4年に一度からの脱却につながっていくのではないだろうか。ならば、その好奇心が乾かないうちがいい。そう考えると、五輪の翌シーズンとはいえ、今冬は決して無駄にはできない〝第1投〟になる。

この度、『ヴィーナスポーツ』さんよりカーリングコラムを連載する機会をいただいた。特定のチームや選手に偏ることなく、大きな大会の結果や速報に留まらず、ルールや戦術にも触れながら、カーリングの魅力をお届けしていきたい。

せっかくなので最後にカーリング情報をひとつ。11月3日~10日に、パシフィックアジアカーリング選手権(以下PACCと表記)が、平昌五輪のカーリング会場となった韓国の江陵(カンヌン)で開催される。

PACCは、パシフィックカーリング連盟に所属する国と地域の代表が集う大会で、来年春のカーリング世界選手権(以下世界選手権)出場が懸かる重要な大会だ。今年は男子9か国女子7か国の出場が決まっている。

日本からは、女子は5月の代表決定戦で富士急に勝利したロコ・ソラーレが出場。男子は5月の代表決定戦で勝利していたSC軽井沢クラブがメンバー解散に伴い代表辞退。9月30日に改めて代表決定戦を行い、札幌国際大に勝利したコンサドーレ札幌が出場する。

世界選手権出場枠は、昨年は上位3か国だったが、今年から上位2か国に戻った。男女ともに実力は、日本、中国、韓国が抜けており、近年この3か国によるシビアな戦いが繰り広げられている。今回からは、PACCで3位になった場合でも、新設の世界最終予選にまわることができ、世界選手権出場の望みをつなぐことができるようになった。とはいえ、世界最終予選を勝ち抜くことも決して楽ではなく、PACCで上位2か国に入って世界選手権出場を確保したいところだ。

嬉しいことに、この大会の模様が、BS日テレとCS日テレジータスで放送される。放送予定の日程は以下の通り。世界選手権出場を懸けた真剣勝負をぜひご覧いただきたい。

11月7日(水)
女子予選 日本vs中国(CS日テレジータス)
11月8日(木)
女子予選 日本vs韓国(BS日テレ)
11月9日(金)
男子準決勝(CS日テレジータス)
女子準決勝(BS日テレ)
11月10日(土)
3位決定戦(CS日テレジータス)
女子決勝(BS日テレ)
男子決勝(CS日テレジータス)

(「ようこそ カーリングの世界へ」土手克幸 )