冬の風物詩、全国高校選手権の切符をめぐり、各地は予選の真っ只中。埼玉県は3回戦が終了し、連覇を狙う昌平や2年ぶり王座奪還に燃える正智深谷、県内2大会を制した成徳大深谷、浦和南、西武文理、浦和東、市立浦和、武南がベスト8に進んだ。熱戦必至の準々決勝は11月3、4日、浦和駒場スタジアムで行われる。埼玉県サッカー協会の鈴木茂会長はどんな思いで高校生たちの熱闘を見ているのだろうか。

全国の優勝旗は地元代表に

全国高校選手権の決勝は埼玉スタジアムで開催されるため、鈴木会長は「ぜひとも全国優勝を」と地元の意地に期待している。他県代表に晴れ舞台を譲り、優勝旗を掲げられるなんて寂しい限り。埼玉県は60回大会で武南が優勝してから縁遠くなり、今大会で頂点に立てば実に37年ぶりの快挙になる。

今年は鈴木会長の願いを後押しする好材料がそろう。昌平が夏の全国高校総体で3位に入り、国体では少年男子が17年ぶりに栄冠を獲得。若い世代の活躍が目立ち、全国高校選手権でも期待は大きい。注目度の高い大会で「勝ってほしい」との鈴木会長の切なる声は、県民みんなの気持ちを代弁している。

審判の育成に力を入れる

今年夏のロシアワールドカップ(W杯)では日本人審判が笛を吹く機会はなかった。1998年フランスW杯から続いた日本人主審は5大会で途切れ、「審判のレベルを上げないと」と審判育成を目標の一つに掲げる。Jリーグでも審判の質の低下が指摘されることも増え、「レベルを上げなければならない」と使命感を持つ。

さらに、「プロの選手になれなくても、プロの審判への道がある。選手だったからこそ分かる試合の流れや息遣い、感覚を生かす機会を作ってあげたい」。プロの選手になれるのはほんの一握り。なれない選手の方がはるかに多い。たとえ選手として出られなくても、審判としてW杯に出場できれば夢は広がる。

旧騎西高校がサッカー場

旧騎西高校は2008年に閉校。2011年には東日本大震災で被災した福島県双葉町民の避難所となった。その旧騎西高校が今度はフットボールセンターに生まれ変わる。日本サッカー協会公認仕様のサッカーグラウンド2面を含め、計4面の整備を行う。

また、トレーニング施設も備え、児童へのスポーツ教室なども実施する予定。「どういう育成や指導をやっていこうか」と新しい拠点の活用に考えをめぐらせる。サッカーを核に地域振興にもつなげられ、活用方法はいくらでもあるだろう。埼玉にまた一つ、スポーツの聖地が増えそうだ。

(「埼玉蹴球百花繚乱」松澤明美)