「サッカー王国」と言われる埼玉のサッカー選手登録数(第1~4種、女子、シニア)は、1位東京の9万3374人に次いで、2位の5万7532人。その「王国」を束ねるのが今年6月に埼玉県サッカー協会の会長に就任した鈴木茂氏だ。

鈴木会長はプロリーグの大宮アルディージャ前社長。経営者としてプロリーグを知り尽くし、選手としては高校、大学、社会人でプレーした。これまでの経験を生かし、どんな「埼玉サッカー」の未来を描くのか。

人のつながりを大事に

基本方針として「人に優しい事業運営」を掲げた。具体的には「気配り、目配り、心配り」と「明るい笑顔と元気な声」。鈴木会長は「選手も、指導者も、審判も、観客も〝人〟。みんな人間なのだから人と人のつながりが大事」と説く。

IT化が進み、「例えばパソコンの調子が悪ければ、ハードディスクを変えればいいとなるが、サッカーをやっているのは人」。お互いを尊重し、思いやり、埼玉サッカーの発展へ連係していく。その心構えで協会運営に取り組む。

ダービーで埼玉を活性化

「大宮アルディージャがJ1に戻り、さいたまダービーが復活できれば」の思いは強い。国内でダービーと名のつく試合は数あるけれど、同一市内に本拠地を置くダービーマッチは、さいたまだけ。「さいたまダービーは埼玉を活性化させてくれる。さいたまダービーはすごい熱く、日本一。そんなダービーを再び見たい」と期待する。

大宮は昨季、J2に降格した。一方の浦和レッドダイヤモンズはJ1で、カテゴリーの違う今季はさいたまダービーが実現しなかった。大宮は残り3試合を残して7位。J1へ自動昇格する1、2位入りは厳しく、昇格の残り1枠を争う参入プレーオフに進むには3~6位に入らねばならない。最終節は11月17日。鈴木会長は思いがかなうことを信じて朗報を待つ。

埼玉から五輪日本代表を

2020年には東京五輪が開かれ、埼玉スタジアムが会場の一つになっている。「埼玉から日本代表を出したい」と意気込む。開催地の地元出身選手が入れば、盛り上がり度はさらに高まり、磐石な「王国」を築くことにつながるだろう。

運営面では「責任を持ってやりたい」と気を引き締める。2002年の日韓ワールドカップ(W杯)でも使用され、「ノウハウはある」と言う。その上で、W杯ではフーリガンと呼ばれる過激なサポーターへの対策が重要だったが、東京五輪は国際的なテロへの対策が急務。警察などの各機関と「しっかり連係を図る」とした。

(「埼玉蹴球百花繚乱」松澤明美 )