10月28日に開催される「全日本大学女子駅伝」。今年で36回目を迎える伝統の一戦だが、男子の学生三大駅伝(出雲、全日本、箱根)の人気に押され気味で、実は専門誌でも取り扱いが少ないのが現状だ。

しかし、現役学生の中には、ユニバーシアード(学生の世界大会)の金メダリストやU20世界選手権の入賞者など、未来の日の丸を背負って立つ人材が豊富に揃っているのをご存じだろうか。前回は名城大が12年ぶりの優勝を飾って盛り上がったが、果たして今年はどこの大学が強いのか? 大会の歴史や現在の勢力図を頭に入れておくと、当日のテレビ中継がより面白く感じるはずだ。

過去15年間は関西勢が上位を独占

今大会の展望へ移る前に、まずは大会の基本知識を頭に入れておきたい。この大会は宮城県仙台市を舞台に6区間38.0kmでおこなわれ、前回大会のシード校8チームと、各地区予選会を勝ち抜いた17校、そしてオープン参加の東北学連選抜の全26チームで争われる。2003年以降は長らく立命大や佛教大など、関西勢が上位を占めてきた歴史があり、以下の表でそれが一目瞭然だ。

【全日本大学女子駅伝における優勝校と準優勝校(2001年以降)】
※太字は関西地区の大学
2001年 1位:筑波大 2位:城西大
2002年 1位:筑波大 2位:名城大
2003年 1位:立命大 2位:京産大
2004年 1位:立命大 2位:名城大
2005年 1位:名城大 2位:立命大
2006年 1位:立命大 2位:名城大
2007年 1位:立命大 2位:佛教大
2008年 1位:立命大 2位:佛教大
2009年 1位:佛教大 2位:立命大
2010年 1位:佛教大 2位:立命大
2011年 1位:立命大 2位:佛教大
2012年 1位:立命大 2位:佛教大
2013年 1位:立命大 2位:大東大
2014年 1位:立命大 2位:大東大
2015年 1位:立命大 2位:大東大
2016年 1位:松山大 2位:立命大
2017年 1位:名城大 2位:大東大

特に2007~2012年までの6年間は立命大と佛教大がワン・ツーを独占。この期間内に両校のいずれかに在籍した選手のうち、以下の選手が日本代表としてオリンピック、世界選手権、アジア大会に出場(吉本は在学中に出場)するなど、まさに〝黄金時代〟を築いた世代と言える。

【立命大&佛教大OGの主な日本代表選手】
●木﨑良子(ダイハツ/佛教大2007年度卒)
→2012年ロンドン五輪女子マラソン代表、2013年世界選手権女子マラソン4位、2014年アジア大会女子マラソン銀メダル
●西原加純(ヤマダ電機/佛教大2010年度卒)
→2014年アジア大会女子1万m代表、2015年世界選手権女子1万m代表
●吉本ひかり(ダイハツ/佛教大2011年度卒)
→2010年アジア大会女子1万m代表、2011年世界選手権女子1万m代表
●田中華絵(資生堂/立命大2011年度卒)
→2018年アジア大会女子マラソン代表
●前田彩里(ダイハツ/佛教大2013年度卒)
→2015年世界選手権女子マラソン代表

立命大はその後、2011年から2015年まで前人未到の5連覇を達成し、学生女子長距離界を席巻。ところが、2016年に松山大が四国勢として初の優勝を飾ると、2017年は名城大が12年ぶりに女王に返り咲くなど、近年は勢力図が変わりつつある。

今年は名城大の1強か? 立命大、東農大、大東大が女王を追う

今大会に話を移すと、前回女王・名城大の実力が頭ひとつ抜けている印象だ。5000m15分台を出場校で唯一5人揃えており、日本インカレ女子10000m優勝の加世田梨花(2年)、同1500m、5000m2冠の髙松智美ムセンビ、7月のU20世界選手権女子3000m4位入賞の和田有菜(ともに1年)といった〝大砲〟を3枚も有する。昨年よりも間違いなくパワーアップを遂げた印象で、アクシデントが起こらない限り、2年連続3回目の優勝はほぼ間違いないと言っていい。

〝1強〟を追うのは、かつての絶対女王である立命大、関東大学女子駅伝で優勝を争った東農大と大東大あたりか。立命大は9月の関西学生女子駅伝で京産大に敗れはしたものの、5000mで現役学生最速の15分27秒83を持つ佐藤成葉(3年)や日本インカレ1万mでダブル入賞を果たした双子の加賀山恵奈・実里姉妹(4年)を中心に総合力は高い。前回4区区間賞の田中綾乃(3年)がエントリーから外れたのは痛いが、確実に上位には食い込んできそうだ。

大東大は過去5大会で4度も準優勝を経験。今大会は前回最長区間の5区(9.2km)でダントツの区間賞を手にした関谷夏希(3年)、6月の日本学生個人選手権女子5000mを大会新(15分46秒84)で制した鈴木優花(1年)のダブルエースを軸に悲願の優勝を狙う。

その大東大を関東大学女子駅伝で破ったのが東農大で、1万m31分台、32分台の選手を4人も揃える選手層が魅力。エースの棟久由貴(3年)は昨年のユニバーシアード・ハーフマラソンで金メダルを獲得した絶対エースで、1年生の竹内あさひは元々実業団のユニクロに所属していたバリバリのトップ選手だ。立命大、大東大とともに上位争いを演出するのは間違いなく、圧倒的な戦力を持つ名城大を相手にどんな戦いを展開するのだろうか。

※出場校エントリーは「杜の都 全日本大学女子駅伝」プレスリリースを参照ください。

前々回覇者の松山大を中心とした〝シード権争い〟にも注目!

その他には、前々回覇者の松山大も忘れてはいけない存在だ。前回は1区の出遅れ(区間24位)が響いて13位に沈んだが、9月の日本インカレでは岡田佳子(3年)、西山未奈美、大内もこ(ともに1年)が女子3000m障害の1~3位を独占。筆者が日本インカレを取材した際には「最低でもシード権(8位以内)」と岡田は話しており、再びの上位進出を狙っている。

8位以内に与えられるシード権争いは熾烈を極めそうで、関西学生女子駅伝で立命大を破った京産大、前回シード校の大阪学大、関大、日体大、城西大も力がある。平成最後の〝杜の都決戦〟はどんなドラマが待ち受けているだろうか。

(「TASUKI-GIRLS」松永貴允 )