一軍デビューできれば合格?

清宮幸太郎(日本ハム)のプロ1年目のシーズンが終わった。53試合に出場し打率.200、7本塁打、18打点。高校通算本塁打111本の新記録を打ち立てた久々の本格派スラッガーということで、期待が大きく膨らんでいただけに少々物足りない数字ではある。今シーズンのパ・リーグは投手、野手ともに傑出した記録を残した新人王資格選手がいないとはいえ、新人王獲得は難しいだろう。

ただ清宮に関しては期待のハードルを上げすぎていた部分もある。新人の野手が1年目から活躍するのはなかなか難しい。これまでの新人王もセが投手38人、野手26人、該当者なし4回、パは投手46人、野手16人、該当者なし6回、特に過去10年のパ・リーグは昨シーズンの源田壮(西武)を除く9人が投手と「投高打低」傾向にある。アマで活躍していたプロレベルの投手はプロ1年目でも同じように活躍できるが、野手はたとえプロレベルでも投手の力量が相対的にアップする分、不利になるというわけだ。

プロの投手のスピードとキレに加え、さらに木製バットにも対応しなければならない高卒ルーキー野手の新人王ということになるとドラフト制以後は1986年の清原和博(西武)と1988年の立浪和義(中日)しかいない。二桁本塁打をマークしているのもドラフト制以後では清原の31本と、1993年の松井秀喜(巨人)の11本の2人だけ。清宮同様に〝超高校級〟のふれこみで入団してきた中田翔(日本ハム)は1年目出場なし、筒香嘉智(DeNA)は3試合に出場し、打率.143、1本塁打、1打点だった。高卒野手の新人でしかもスラッガータイプということになると、1年目で一軍デビューできれば御の字。清宮の成績も及第点といえるのかもしれない。

【主な高卒新人野手の1年目の成績】

1952年☆中西 太(西鉄) 試合111 打数384 安打108 本塁打12 打点65 打率.281 本塁打率32.00
1953年☆豊田泰光(西鉄) 試合115 打数402 安打113 本塁打27 打点59 打率.281 本塁打率14.89
1955年☆榎本喜八(毎日) 試合139 打数490 安打146 本塁打16 打点67 打率.298 本塁打率30.63
1959年☆張本 勲(東映) 試合125 打数418 安打115 本塁打13 打点57 打率.275 本塁打率32.15
1959年 王 貞治(巨人) 試合94 打数193 安打31 本塁打7 打点25 打率.161 本塁打率27.57
(以下、ドラフト制後)
1986年☆清原和博(西武) 試合126 打数404 安打123 本塁打31 打点78 打率.304 本塁打率13.03
1988年☆立浪和義(中日) 試合110 打数336 安打75 本塁打4  打点18 打率.223 本塁打率84.00
1993年 松井秀喜(巨人) 試合57 打数184 安打41 本塁打11 打点27 打率.223 本塁打率16.73
2013年 大谷翔平(日本ハム) 試合77 打数189 安打45 本塁打3  打点20 打率.238 本塁打率63.00
2014年 森 友哉(西武) 試合41 打数80 安打22 本塁打6  打点15 打率.275 本塁打率13.33
2018年?清宮幸太郎(日本ハム) 試合53 打数160 安打32 本塁打7  打点18 打率.200 本塁打率22.86
※高卒新人野手の新人王は名前の前に☆のついた6人のみ

本塁打率に注目

清宮の「本塁打率」にも注目したい。本塁打率とは打数を本塁打数で割ったもので、本塁打を1本打つのに要する打数を示したもので、清宮のように通年、一軍でプレーしていなくても、過去の記録と比較し、スラッガーとしての能力、将来性をある程度、計ることができる。

清宮は160打数で7本塁打、本塁打率は22.86だった。清原の13.03、松井の16.72、そして2014年森友哉(西武)の13.33には及ばなかったが、母校・早実の大先輩、王貞治や、今シーズン日本人野手メジャー1年目の本塁打記録を更新した大谷翔平を上回った。仮に通年出場し打数が400だったとすると、約17本塁打になる。この本塁打率を高いとみるか、普通と見るかは実に微妙なところ。高卒新人としては十二分な数字だが、超高校級スラッガーといわれる以上は10台を出して欲しかったというのは欲張りすぎだろうか。ただ清宮はファームで17本塁打を放ち1本差で本塁打王を逃したが、本塁打率は9.41という驚異的な数字を叩き出し、前評判に違わぬところを見せている。来シーズンのさらなる飛躍を期待していいだろう。

ちなみに1年目に一軍、二軍ともに、清宮と同程度出場した松井は、2年目の1994年にセンターの定位置を掴み、当時130試合だった公式戦にフル出場。打率.294、20本塁打、66打点(本塁打率は503打数20本塁打で25.15と1年目よりも落ちている)をマークしている。未だ堂々のレギュラーではない清宮にとってはなかなかハードルの高い数字だが、この成績にどこまで迫れるのか、あるいは追い越してしまうのか? 要注目となる。

(「屁理屈野球雑記」石川哲也 )