2016年10月15日、箱根駅伝に87年間連続で出場していた中央大の〝タスキ〟が途切れた。

「自分たちはやれると思いながら今までやってきました。それに対して誰も文句は言わせません。もし、先輩方に文句を言うような人がいれば自分が受けて立ちます」

レース直後の報告会で、1年生主将・舟津彰馬がした痛切なスピーチを覚えている人は多いだろう。

箱根駅伝の連続出場記録が87回で途切れても、優勝から長らく遠ざかっても歴史は続く。今年、中央大陸上部長距離ブロックは創部100年目を迎えた。

その節目にふさわしい、そして幸先良いスタートを切ったのが4月に入学した吉居大和だ。

5000mの自己ベストは高3の7月にマークした13分55秒10。今春大学に進学した日本人選手の中で3位の記録は、チーム内では上級生を抑えてトップに立つ。

主将だった舟津とは立場が異なるが、入学早々チームをけん引する存在となった。

新型コロナウイルスの影響で大会が中止・延期となっていた陸上競技会は7月に再開すると、期待のルーキーが躍動する。

大学デビュー戦はホクレン・ディスタンスチャレンジ深川大会の5000mに出走。13分45秒を目標に設定したレースで、4000mに差し掛かる頃ペースメーカーの前に出て自らレースを進める。ラスト1周、吉居はさらに加速すると組トップの13分38秒79でフィニッシュした。

自己ベストを大幅に更新しただけではなく、遠藤日向(現・住友電工)に並ぶU20日本歴代5位タイに躍り出る。

続く10日後、ホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会5000mに出場。吉居は3000m過ぎまで外国人選手、実業団選手が形成する先頭集団に果敢に食らいつき、13分28秒31を叩き出す。

今度は2005年に佐藤悠基(当時東海大1年)が樹立したU20日本記録(13分31秒72)を15年ぶりに塗り替えた。

中大に現れたスーパールーキーの今後がより一層楽しみになった。しかし、1年生エースにかけられる期待とプレッシャーは察するに余りある。主将とエース、立場は違えども、その苦労は舟津にしか理解できないだろう。

吉居が紡ぐ中大長距離ブロックの歴史はどんなものになるのだろうか。箱根駅伝でのシード権獲得か、それともさらに上位に食い込むのか。きっと吉居は重圧をはねのけ、〝Cマーク〟のユニフォームが輝きを放つための立役者となっていくことだろう。

(「学生陸上スポットライト」野田しほり)