ジョー・ディマジオの56試合連続安打が達成されたのは1941年。テッド・ウィリアムが最後の4割打者となったのと同じシーズンだ。5月15日のホワイトソックス戦からスタートし、7月16日のインディアンス戦まで約2ヵ月間、26試合に渡って続いた。

期間中の安打は91本で打率は.408、マルチ安打が22試合とほとんどの試合が固め打ちだった。また中軸を担い、長打も期待されたディマジオは期間中に15本塁打、55打点とポイントゲッターとしての役割をしっかりと果たしていた。1、2番を打つような巧打者タイプが断然有利なこの記録にあって特筆すべきだろう。

ヨーロッパ戦線は拡大の一途を辿り、アメリカにも戦火が忍び寄る暗い話題の多かった当時、ディマジオの連続安打は全米に熱狂を持って迎えられたという。そのような世論の後押しが影響したわけではないだろうが、30試合目、44試合目には内野手の悪送球やエラーがヒットと判定されたともいわれている。50試合以上ヒットを打ち続けるには有利な判定を呼び込む「運」も必要ということだろう。

ディマジオ自身、マイナー時代にも61試合連続安打を記録するなど、この記録と縁があった。“Hitting streak”の概念はディマジオによってもたらされたといっていい。通算成績は従軍による3年間の空白もあり2214安打、361本塁打と驚異的というほどではないにもかかわらず、今日においてもディマジオ=連続試合安打であり、ベーブ・ルースと並び称されるメジャーリーグ史のヒーローである。

連続試合安打ベスト10
1 ジョー・ディマジオ(ヤンキース) 56試合(1941年)
2 ウィーリー・キラー(オリオールズ) 45試合(1897年)
3 ピート・ローズ(レッズ) 44試合(1978年)
4 ビル・ダーレン(カブス) 42試合(1894年)
5 ジョージ・シスラー(ブラウンズ) 41試合(1922年)
6 タイ・カッブ (タイガース) 40試合(1911年)
7 ポール・モリター (ブリュワーズ) 39試合(1987年)
8 ジミー・ロリンズ (フィリーズ) 38試合(2005~06年)
9 トミー・ホールズ(ブラウンズ) 37試合(1945年)
10 ジーン・デモントレビル(セネタース) 36年(1896~97年)
※2019年シーズン終了時

その後ディマジオの記録に迫ったのは78年、ピート・ローズの44試合。つづいて86年にはポール・モリターの39試合。いずれも10試合以上の差がある。現役選手では2019年に前年から足掛け31試合を記録したウィット・メリフィールド(ロイヤルズ)の31試合が最多となる。

ちなみに21世紀のヒットメーカー、イチローは09年に27試合連続安打を記録しており、これはマリナーズの球団記録だ。打撃記録はリーグ創成期に作られたものが多いが、連続試合安打のベスト10は達成時期が分散する傾向にある。ジョー・ディマジオの作った56試合連続記録は、いつの時代でも達成可能性がありそうでいて、厚い壁になっているということなのだろう。

(「MLBアアンチャッタブルレコードの真実」石川哲也)