これまでの記事では、緊張や集中、モチベーションを上げるなど、心理的なスキルを向上させるための方法、また具体的なメンタルトレーニングについても説明してきました。

スポーツ心理学では、これらのような心理面のスキルを向上させるための研究が行われています。スポーツを上達させるためには「心」「技」「体」それぞれの向上が必要であると言われていますが、「心」に当たる心理面のスキルが重要であることが理解できたでしょうか。

一方で、運動能力を向上させるためには技術や体力を習得するための身体的なスキルも向上させる必要があります。技術面においては、サッカーであればドリブルやシュートの技術、野球であれば走・攻・守のほか、ピッチングの技術も必要でしょう。また体力面であれば、瞬発力や持久力、筋力などの強化が該当します。

どのような競技においても、普段の練習では主にこういった「技」や「体」にあたる技術や体力を習得するために時間が割かれているのではないでしょうか。

この身体的なスキルのうち、技術面のスキル向上においては知覚や感情など心理的な視点から行われている研究結果を踏まえることで、効果的な練習方法が可能になります。運動を行う際は、身体内と身体外の両方からの情報を処理し、運動スキルを自身でコントロールしています。この一連の身体機能を〝運動制御〟と言いますが、これは心理活動のひとつになり、身体的スキルと関連させたスポーツ心理学の研究として行われているのです。

ただやみくもに技術的な練習をしていても、その技術が身についていなければ練習を行う意味はありません。きつい練習を行うのは上達するためなのですから、効率的に技術を習得したいと誰もが思うでしょう。

そこで、心理的要因と身体的要因から明らかになっている、運動スキルを効率的に習得する(〝運動学習〟と言います)方法について、次回から説明していきます。

スポーツ心理学は心理スキルだけではなく、運動スキルの向上においても実用できるので、普段の練習や試合に生かしてみてください。

※『note』より加筆・修正。

(「パフォーマンスを上げるためのスポーツ心理学」松山林太郎 )