メジャーリーグのシーズン最高打率は近代野球のルールが確立された20世紀以後を対象とするのが一般的で、1901年のア・リーグ首位打者、ナップ・ラジョイが記録した.426がトップとなる。ただこの記録が達成された当時のア・リーグではファウルをストライクとしてカウントしていないなど現在とルールが異なるため、1924年にロジャース・ホーンスビーが記録した。424を最高記録とする場合もある。また19世紀に達成された記録も含めるのならば1894年ヒュー・ダフィーの.440が最高になる。いずれにしても今日では考えられないような高打率になる。

19世紀の記録を参考扱いにしてもベスト10は「神話」のような1900年代前半に達成された記録がほとんどだ。

シーズン打率ベスト10
1 ナップ・ラジョイ(アスレチックス) .4264(544-232) 1901
2 ロジャース・ホーンスビー(カージナルス).4235(536-227) 1924
3 ジョージ・シスラー(ブラウンズ) .4198(586-246) 1922
4 タイ・カッブ(タイガース) .4196(591-248) 1911
5 タイ・カッブ(タイガース) .4087(553-227) 1912
6 ジョー・ジャクソン(ナップス) .4081(571-233) 1911
7 ジョージ・シスラー(ブラウンズ) .4073(631-257) 1920
8 テッド・ウィリアムス(レッドソックス) .4057(456-185) 1941
9 ロジャース・ホーンスビー(カージナルス).4028(504-203) 1925
10 ハリー・ハイルマン(タイガース) .4027(524-211) 1923
(2019年シーズン終了時)

驚くべきことに1911年の『シューレス』ジョー・ジャクソンなどは.4081を打ちながら首位打者を逃している。4割を打ちながら首位打者を逃しているのはこの年のジャクソンのほか、22年のホーンスビー(.4021)、タイ・カッブ(.4011)と3人もいる。

「神話」のような記録が並ぶなかで1990年代に入ってから記録されているのが歴代18位、94年トニー・グウィンの.394。419打数165安打なので計算上、4割には3安打足りなかった。このシーズンは8月11日をもって選手会がストライキに突入したが、グウィンは8月に入ってから40打数19安打、.475と猛烈に調子を上げていただけに悔やまれるシーズン打ち切りだった。

現役選手ではアルバート・プホルスがカージナルス時代の2003年に記録した.359が最高と少々物足りない。ちなみにイチローのメジャーリーグでのシーズン最高打率はシーズン最多安打記録を樹立した2004年の.372で、2019年開幕時点では現役選手の最高記録だった。

(「MLBアアンタッチャブルレコードの真実」石川哲也)