良いチーム作りを行うためには、前回の記事までの内容に加え、チームの立ち上げ時に「チームでのメンバー個々の役割」も決めましょう。リーダーや副リーダー、ムードメーカーが役割として挙げられますが、そのほかにも「新しい練習法を提案する役」「チームの内紛を調整する役」など、挙げようと思えばさまざまにあるはずです。

リーダーばかりに役割を持たせるのではなく、メンバー全員に役割を与えることが重要です。たとえ人数が多いチームであっても、チーム内でブロック分けされた中からそれぞれに役割を持たせるといったことができるかと思います。メンバーは役割を与えられることで、やりがいを感じることができるでしょう。

これにはチーム内で「社会的手抜き」が起きないよう、必要不可欠な存在であるメンバーの一員としての自覚を持たせ、役割と責任を明確化させる意味合いがあります。それによってチームワークの質を高め、問題が起きたとしてもメンバーが役割を果たすことで解決できることがあります。指導者やキャプテンが中心となり、選手それぞれに合った役割を考えてみましょう。

以上までにチーム作りにおいて必要なものとして挙げた「リーダーの能力」「チームの目標」「メンバーについてお互いを知り合う」「メンバー個々の役割と責任の割り当て」によってチーム力は向上します。それによって向上したチームワークが、戦う集団に団結力と士気を生みます。

団結力は心理学で〝凝集性〟と呼ばれますが、凝集性が高まると個人が自発的に集団に留まろうとする力が働き、まとまりのある集団になります。集団が分裂しそうになっても耐えることができ、集団が共有している規範や考え方への順応も高まるでしょう。そして、チームや個人においても競技パフォーマンスが高まるという研究結果も得られています。いわば、団結力が競技の結果にも影響を及ぼしているのです。

ただ、ひとつ押さえておきたいのは、凝集性は集団の規模が小さいほど高まることが報告されています。しかし、チームによっては100人を超えるような大集団に所属しているケースもあるでしょう。そのような場合はチーム内を数ブロックに分けて小集団を作るなど、まとまりを感じられるようにするといいかもしれません。事実、高校野球の名門校など入部希望者が多いチームは、こうしたブロック制を用いている例があります。

またチームワークの向上が士気を高めますが、これには主に「チームの目標」の内容が影響されると覚えておきましょう。この士気を〝モラール〟とも呼びますが、モラールが高まることで凝集性も高まり、集団への価値を感じてチームが安定していきます。士気の高まりにおいても選手を動機づけ、競技での個人やチームのパフォーマンスに影響していると言われています。

※『note』より加筆・修正。

(「パフォーマンスを上げるためのスポーツ心理学」松山林太郎 )