2月22日、福岡で行われたクロスカントリー日本選手権。29分18秒でシニア男子10kmを制したのは浦野雄平(國學院大)だった。今春大学を卒業する浦野は、4年前どのような学生生活を過ごそうと思い描いていたのだろうか。

今年度、國學院大は駅伝のみならず、トラックシーズンから結果を出してきた。5月に行われた関東インカレ2部では5000m、1万mともに浦野が日本人トップの成績を収め、ハーフマラソンでは土方英和が優勝した。9月の日本インカレでは1万mで土方と藤木宏太が日本人ワンツーフィニッシュを飾り、5000mでは浦野が日本人2位でゴールした。

駅伝シーズンが始まるとその勢いは止まらず、出雲駅伝で初優勝を果たす。浦野は3区を任され区間順位こそ3位だったが、それまでの区間記録を14秒上回る区間新記録をマークして、初優勝に貢献した。

箱根駅伝では前年に区間新記録を樹立して区間賞を獲得した5区を再び任された。区間賞は獲得できなかったが、今回も区間新記録で順位を一つ上げて芦ノ湖のゴールに2番目に飛び込んだ。チームが過去最高の総合3位に食い込んだのも、浦野の走りが弾みとなった。

そして迎えた國學院大でのラストラン。朝降っていた雨も昼前には止み、会場の海の中道公園では雲一つない青空が広がっていた。ただ冷たくはないものの強い風が吹いていた。

シニア男子のレースは1周2kmのコースを5周する。スタートすると浦野は先頭集団には付くものの、レースを引っ張ることなく様子を伺いながらレースを進めていく。

徐々に集団は絞られ、田村和希(住友電工)が残り3kmほどで仕掛けたときは4名に減っていた。ペースチェンジに対応したのは田村の弟・友佑(黒崎播磨)と浦野だった。最後の1周に入ったとき浦野は田村友佑の後ろにピタリと付けていたが、ビックパワーヒルと呼ばれる6mの高低差がある丘を下りきって平地を進んでいるときにトップを奪った。

残り1kmで浦野がスパートすると、あっという間に差は開き、田村兄弟を寄せ付けず、2位の兄・和希に6秒もの差をつけてゴールした。

気象条件、レ―ス展開が違うため一概に比較できないが、浦野の優勝タイム29分18秒は、2018年の29分53秒(大迫傑・NIKE)、2019年の29分36秒(坂東悠汰・富士通)を大きく上回った。この優勝により5月に国立競技場で行われる日本選手権1万mの出場権を得た。浦野にとって初めての日本選手権出場となる。日本一を決めるレースを通してまた一段と成長した姿を見ることができるだろう。

國學院大で過ごした4年間は浦野が入学時に思い描いていた以上のものになったのではないだろうか。箱根駅伝で山下りを任された1年時、1区を2位と好走した2年時は、ともにシード落ちを経験している。しかし、最後の年は箱根駅伝で総合3位に大躍進。そしてクロスカントリー日本選手権でタイトルを獲得した。

仲間と共に得たものだけではなく、浦野自身の「成長」を示す勝利を手に次のステージへ駆け上がっていく。

(「学生陸上スポットライト」野田しほり)