チームを作っていく上で、リーダーの存在は欠かせません。「集団の課題を解決する」「集団の目標を達成する」「集団を維持させる」ことに関し、リーダーの役割は重要になってきます。指導者が持っているリーダーシップの特性は、チーム力に大きく影響してくるわけです。

また指導者のみならず、キャプテンがリーダーシップの役割を担うことも大いにあります。メンバーから選ばれたキャプテンがどのようなリーダーシップを発揮するかによって、そのシーズンの出来が左右するのです。したがって、新チームになってキャプテンを決めるということは、大変重要になります。

チームの中で一番競技力があるからという理由でキャプテンを決めてはいないでしょうか? そのほか、リーダーに向いていないような選手を、安易にキャプテンとして選んではいないでしょうか?

リーダーがチームに機能するためには、〝PM理論〟で適性を判断できます。

集団機能は、リーダーが持つP(Performance)機能と、M(Maintenance)機能の組み合わせによって成り立っています。P機能は、課題解決や目標達成のために行動する「集団目標達成機能」になります。リーダーとして集団を統率したり、練習で厳しさを注入したりするような行動をイメージすればいいかと思います。ぐいぐい引っ張っていくような、一般的に想像しやすいリーダーシップと考えれば良いでしょうか。

かたやM機能は、集団の存続や維持のために行動する「集団維持機能」になります。メンバーへの配慮や、チームワークを維持・強化するような行動が挙げられます。リーダーシップには、リーダーらしく統率して目標に達成させる能力だけでなく、集団へ配慮してチームワークを図る能力も必要になるのです。

このP機能とM機能を組み合わせることで、4つのタイプに分類することができます。PまたはMの機能で高い行動ができる場合は大文字、低い行動である場合は小文字で表され、PM型、Pm型、pM型、pm型の4種類のリーダーシップのタイプが見られます。

PM型:課題遂行や目標達成に向かう力があり、対人関係の調整によって集団を維持し、まとめる力もある。
Pm型:課題遂行や目標達成に向かう力はあるが、集団をまとめる力はやや弱い。
pM型:集団を維持し、まとめる力はあるが、目標達成に向かって引っ張っていく力はやや弱い。
pm型:目標達成に向かう力も集団を維持してまとめる力も弱く、リーダーシップに消極的で放任的。

以上の4種類です。PM型のリーダーが最も理想的であり、キャプテンとして選出するにふさわしい能力を持っているでしょう。

一方のpm型は、リーダーとしては最もふさわしくない人物になります。競技能力があってパフォーマンスでは頼りになったとしても、その選手がpm型であればキャプテンに選ぶことは避けたほうがよいでしょう。

もしPM型のリーダーシップが取れる選手がいれば、その選手をキャプテンに任命するのが最善です。しかし、PM型のメンバーが存在するとは限りません。Pm型とpM型のどちらかを選出しなければならないケースは少なくないはずです。チーム事情を鑑みて、どちらがキャプテンとしてふさわしいのかを考える必要があります。

もしチームが「まとめやすい集団」である場合か「まとめにくい集団」かのどちらかに偏りがある場合は、Pm型のリーダーシップの効果が表れやすいでしょう。また「まとめやすくもまとめにくくもない、中程度の集団」であれば、pM型のリーダーシップが統制力を発揮します。

ただ、「集団目標達成機能」と「集団維持機能」の両輪がバランスよく集団に効果が出ることが最善です。したがってPm型のキャプテンを選出したのであれば、副キャプテンなどでpM型の選手が同等の権限を持つようキャプテンと連携してチームを引っ張っていくとよいでしょう。

またpM型の選手がキャプテンの場合も同様、Pm型の選手がキャプテンを補佐して補完するのです。また指導者の特性を考慮して、チームのバランスが取れるキャプテンを選出することも選択のひとつに入れられます。

このように、リーダーを選出することは重要になります。新チームのキャプテンを任命する際は、指導者などチーム事情をよく理解している人が中心となって、熟慮しましょう。

※『note』より加筆・修正。

(「パフォーマンスを上げるためのスポーツ心理学」松山林太郎 )